邂逅 ページ5
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「鬼が出た、とは言っても聞いた奴ら全員、出た"らしい"、見た"らしい"で、実害もなかったからな...。
希望的観測として熊か、百歩譲って本物の妖の鬼かと思ったが...残念ながら敵さんだったな」
溜息を吐きながらそう言った薬研に、画像を見つめたままのこんのすけが続ける。
「どれも夜闇に紛れるように単体でいますね。...まるで偵察しているかのようです」
「そうだね...」
夜闇に紛れる。偵察。
私には彼らが、
「...」
何かを探しているように見えて仕方がない。
「敵さんも進化するってか」
「今までに類を見ません。千歳様に報告します」
今まで相対してきた遡行軍とは何かが違う。
じわりじわりと忍び寄る得体の知れない不快感に、僅かに顔を顰めた、その時だった。
「やめてください!!」
「「!?」」
突如響いたその声に思わず肩を揺らす。
何事だと三人で顔を見合わせると、どうやら声は私達が屋根に登っている家屋のすぐ隣の路地裏から聞こえてくるようだった。
「何だありゃ」
ひょいと少しだけ顔を覗かせると、笠を被った一人の少年と少女が、如何にも柄の悪そうな男数人に囲まれている光景が目に入ってきた。
「離せってば!」
「うるせえ大人しくしろ!」
「お前らがあの噂のガキ共だろ?」
「離して!」
「軟派か?あんまいい空気じゃねえな...行くか」
「え、ちょっ」
明らかに良くない雰囲気を見兼ねてか、薬研がそう即決すると屋根から飛び降りる。
私としても任務に関係ないからと言って放っておくのは気が引けるから別に咎める気はない、けど...
「...」
何か、嫌な予感がする。
そっちに行ってはいけないと、誰かが警鐘を鳴らす。
それでもここにずっといるわけにも行かずに、薬研よりも少し彼らと離れた位置に着地する。それと同時に薬研が彼らに声を掛けた。
「おい、嫌がってるとこ無理やり連れてこうとするのはあんまり良くないぜ」
「...あ?」
「なんだこのガキ...妙な成りしてんな」
「俺から見たらお前らの方がガキだがな」
「なんだと?」
「っ、あ...!」
「いっ...!」
薬研の言葉が勘に障ったのか男達は乱雑に少女と少年を掴んでいた手を離す。
その弾みで、壁に打ち付けられた彼らの笠が外れた。
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「...ぁ、...」
「...っ、Aさん...!」
目の前に広がったのは、星の欠片を集めたような、美しい銀色だった。
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狩歌(プロフ) - 作者さん» 私も作者さんのコメントで大泣きしました。ありがとうございます...!! (2020年2月14日 8時) (レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
作者 - 大泣きした…もうやばい…語彙力低下した… (2020年2月14日 1時) (レス) id: 514b4bbba8 (このIDを非表示/違反報告)
狩歌(プロフ) - かふぇいんさん» 告白されちった(違う)。そんなこと言っていただけて感無量です。ありがとうございます!リクエスト了解しました!もうしばしお待ちください! (2019年2月10日 22時) (レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
かふぇいん(プロフ) - 連続でコメントすみません…!夢主ちゃんの質問コーナーみたいな茶番が見たいです。ぜひお願いします! (2019年2月10日 22時) (レス) id: 67bbfad4af (このIDを非表示/違反報告)
かふぇいん(プロフ) - すき。すきです。すきしかでてこないです。これからも心から応援してますッ…! (2019年2月10日 22時) (レス) id: 67bbfad4af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:狩歌 | 作成日時:2018年12月28日 13時