茜雲に揺蕩いて ページ30
【堀川side】
任務に没頭していると、時間が過ぎるのはいつもあっという間だ。
兼さん達と別れてからAと共に聞き込みして、昼食摂って、また聞き込みして...そうこうしているうちに、僕らの頭上に広がっていた青空は西の空に僅かに茜色を差し始めていた。
で、その下で僕は何をしているかというと。
「...遅い」
町外れに立つ一本木の下で腕を組み、盛大に舌を鳴らしていた。
兼さんに見られたら「ガラが悪い」と言われるだろう。でもその前に理由を聞いて欲しい。
午後から僕とAは別行動を取っていて、時間になったらここで落ち合う約束をしていた。しかしその約束の時間は三十分ほど前に過ぎている。
「...どこで油売ってるんだよ」
一発拳骨かましてやろう。
そう決意した時だった。
「すまん遅れた」
聞こえてきた本当に反省してんのかと言いたくなるようなその声に、防がれるだろうが取り敢えず拳骨と思い振り返ると。
「にゃー」
「え」
そう鳴きながらするりと足元に茶色の猫が擦り寄ってきた。
拳に力を込めた僕を見上げこてんと首を傾げる様に瞬く間に戦意が削がれていく。
「...猫？」
「この辺の子供達が可愛がってる子なんだって。迷子になったって皆騒いでたから、探すの手伝ってた」
現れたAは猫を抱き抱えその喉を鳴らしてやりながらそう言った。確かによく見ればこいつの服が所々汚れている。
「あ、聞き込みはちゃんとしたからね、殴んなよ」
「僕のことなんだと思ってんの」
「腹黒ピアス」
「剥ぐ」
「おい」
がしっとAの頭を掴んだ瞬間、腕の中にいた猫がするりとそこから飛び降りる。
「あ」
そしてAの後方へ...正確には、そこにいた数人の子供達のもとへ駆け寄って行った。
「お姉ちゃん、探すの手伝ってくれてありがとう！」
「どういたしまして。気をつけて遊びなよ」
駆け寄ってきた猫を抱えぶんぶんと大きく手を振る子供達に、Aも小さく手を振り返しそう答える。
「...」
『いらない』
『居ても邪魔になるだけだ』
子供達に穏やかに笑いかけるその姿からは、とてもあの冷たい雰囲気は感じられない。
あのあと話しかけても、Aはけろっといつも通りだった。
あまりにもいつも通り過ぎて、何も言えなくなってしまった。
今だって、
「...A」
「んー？」
ほら。
君がまた、いつも通りに笑うから。
僕はそれ以上、触れられない。
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狩歌(プロフ) - 作者さん» 私も作者さんのコメントで大泣きしました。ありがとうございます...！！ (2020年2月14日 8時) (
レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
作者 - 大泣きした…もうやばい…語彙力低下した… (2020年2月14日 1時) (レス) id: 514b4bbba8 (このIDを非表示/違反報告)
狩歌(プロフ) - かふぇいんさん» 告白されちった(違う)。そんなこと言っていただけて感無量です。ありがとうございます！リクエスト了解しました！もうしばしお待ちください！ (2019年2月10日 22時) (レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
かふぇいん(プロフ) - 連続でコメントすみません…！夢主ちゃんの質問コーナーみたいな茶番が見たいです。ぜひお願いします！ (2019年2月10日 22時) (レス) id: 67bbfad4af (このIDを非表示/違反報告)
かふぇいん(プロフ) - すき。すきです。すきしかでてこないです。これからも心から応援してますッ…！ (2019年2月10日 22時) (レス) id: 67bbfad4af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩歌 | 作成日時：2018年12月28日 13時
