天才 ページ29
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うちの本丸のお目付け役とも言う木蓮が今日ここに訪れたのは、もちろん定期訪問のためではない。
件の話...あの異例の遡行軍の話をするためだ。
「ボロを出した、とはどういうことです?」
目を鋭く細めそう聞いてきた木蓮を一瞥し、俺は地図に目を向けたまま答えた。
「俺の方でも今回の遡行軍について色々調べてみたんだ。そしたらこいつら遡行する時、時間遡行術に被せて、"時間遡行術を使っていることを隠す術"を使っていた」
「...隠す...」
「つまりそれを使うことで、今まで俺やあんたらが感知してた時空の壁を破る気配を消してたってわけだ」
俺達は戦いの中、日々進化していく。
それは敵も同じということ。
「だがそんな"術を隠す術"なんて高度なもん、そうほいほい出来るもんじゃない」
当然だ。術を使ってることを隠し、尚且つ隠してることすら分からないようにする術、なんて。
「敵は遡行していることをこちらにバレないように遡行する必要があった。でもそれを幾度と繰り返したことで力が限界に近づいてボロが出たんだ」
「...貴方はそのボロを先程感じ取った、ということですね。その地図の反応がそれだと」
「ああ」
時間遡行軍が出した信号を見やる。
あいつらが次に和泉守達が出陣した時代に現れるのは、奇しくも遡行予想をしていた明日の夜。
でもこの情報はでかい。今まで予想だったのが確信に変わったんだ。
「和泉守達に連絡するから少し待ってくれ」
言うが早いか、俺は素早くこんのすけへ向けてメールを打ち込む。
ホログラム上に「送信完了」の文字が浮かんだのを見て一息吐くと、木蓮の前に腰を下ろし茶を煽った。
「...さすがですね」
「あ?」
突然なんだと彼女を見やる。
ふっと小さく笑ってから、木蓮は言葉を続けた。
「今回の"部隊を七振り編成にしろ"という政府からの通達...達成出来ている本丸は十にも満たないことをご存じですか?」
「そんな難しいことか?」
「過去に送り出す刀剣が六から七に増えるというのは、想像以上に霊力の消費が激しいものです。多くの審神者は霊力が足りず実行に至っていませんよ」
「ふーん」
「その点貴方は平然とやってのけている。更に先程の微弱な霊力の揺れも感じ取った」
「...」
「やはり貴方は天才ですね、千歳様」
「...そりゃどーも」
ず、と紅茶を啜った木蓮が顔を上げる。
美しい藍が鋭く光った。
「紫空切氷雪を部隊に加えたことは、誤算でしたが」
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狩歌(プロフ) - 作者さん» 私も作者さんのコメントで大泣きしました。ありがとうございます...!! (2020年2月14日 8時) (レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
作者 - 大泣きした…もうやばい…語彙力低下した… (2020年2月14日 1時) (レス) id: 514b4bbba8 (このIDを非表示/違反報告)
狩歌(プロフ) - かふぇいんさん» 告白されちった(違う)。そんなこと言っていただけて感無量です。ありがとうございます!リクエスト了解しました!もうしばしお待ちください! (2019年2月10日 22時) (レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
かふぇいん(プロフ) - 連続でコメントすみません…!夢主ちゃんの質問コーナーみたいな茶番が見たいです。ぜひお願いします! (2019年2月10日 22時) (レス) id: 67bbfad4af (このIDを非表示/違反報告)
かふぇいん(プロフ) - すき。すきです。すきしかでてこないです。これからも心から応援してますッ…! (2019年2月10日 22時) (レス) id: 67bbfad4af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:狩歌 | 作成日時:2018年12月28日 13時