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昔話 ページ21

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今、巷で"隣町に鬼が現れた"という噂が囁かれているのはご存知だと思います。

実害こそ出ていないそうですが、町の人達は皆警戒して家に閉じ篭り、中には町を出ていく人もいるそうです。
当然といえば当然ですよね。鬼なんて得体の知れない化け物が現れたなら。


...それにあの町は、今からちょうど十年前にも、鬼に襲われていますから。


それこそその時は死人が出ました。

現れたのは人喰い鬼で、老若男女問わず捕えられ喰われた...。


その当時、私達家族も、あの町に暮らしていました。





隣町は立派な城を中心とした城下町です。繁栄し、活気に溢れている。この町の比ではありません。

そんな賑やかさから離れた町の外れに、私達家族は住んでいました。



私達の家は代々続く鍛冶屋でした。父は腕の良い鍛治職人で、兄も父に弟子入りし修行中の身ではありましたが、その腕前は専ら有名でした。冬夜もその道を期待されていたんですよ。

母は飯所でお話したように珍しい雪色の髪の持ち主で、私達兄弟も皆その血を受け継いでいました。
...姉だけは、母と同じ真白の髪を受け継いで。



特別裕福でもなかったけれど、貧しくもなかった。

ただ、大切な家族がいた。


髪色が原因で虐められたり、人売りに売られそうになったこともありましたが、毎日幸せに暮らしていました。



家族皆で、"一族の悲願"を達成するために、力を合わせながら。





..."一族の悲願"...そうですね、それをお話しないと。


私達は町外れに暮らす鍛冶屋だと言いましたが、それはただ、


私達が城から追放されたただけなんです。



本当は城の中に住まわせてもらい、そこで殿様や家来様方の刀を鍛刀するお墨付きの鍛冶屋だったんです。ふふ、意外とすごいでしょう?


...でも、追放された。

同じく城住まいで殿様に仕えていた私達の親戚が、謀反を起こしたからです。


女子供関係なく処刑されました。
ただ私達は、謀反を起こした者達の親戚といえどかなり縁遠だったので追放で済んだんです。私達の祖父が、まだ物心付かない子供の時の出来事でした。



...それから、町外れに移り住んで。

そこで、いつか殿様から許しをもらって城に戻り、かつての誇りを取り戻すことを目標に暮らしていました。








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...そしてその機会が訪れた。





私たち家族の、崩壊を連れて。


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狩歌(プロフ) - 作者さん» 私も作者さんのコメントで大泣きしました。ありがとうございます...!! (2020年2月14日 8時) (レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
作者 - 大泣きした…もうやばい…語彙力低下した… (2020年2月14日 1時) (レス) id: 514b4bbba8 (このIDを非表示/違反報告)
狩歌(プロフ) - かふぇいんさん» 告白されちった(違う)。そんなこと言っていただけて感無量です。ありがとうございます!リクエスト了解しました!もうしばしお待ちください! (2019年2月10日 22時) (レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
かふぇいん(プロフ) - 連続でコメントすみません…!夢主ちゃんの質問コーナーみたいな茶番が見たいです。ぜひお願いします! (2019年2月10日 22時) (レス) id: 67bbfad4af (このIDを非表示/違反報告)
かふぇいん(プロフ) - すき。すきです。すきしかでてこないです。これからも心から応援してますッ…! (2019年2月10日 22時) (レス) id: 67bbfad4af (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狩歌 | 作成日時:2018年12月28日 13時

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