玉緒の答え ページ19
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"叙々苑"というワードに全員が同意し、陸奥守さんが「肉肉肉肉肉(略)」と呟き始める。本日のその食べっぷりから"バキューム吉行"なる渾名を兼さんとAに付けられた陸奥守さんの目が本気だったことに、主さんの財布の中身が空になる未来しか見えなくて静かに合掌した。
すると。
「真白です。入ってもいいですか?」
トントンと何度か扉が叩かれた後に、そう真白さんの声が聞こえた。
その声に一番入口から離れた場所に座るAが被りっぱなしだったフードを更に目深に被り直し、隣に座る蜻蛉切さんの陰に僅かに身を潜める。
気づいた蜻蛉切さんは小さく苦笑する。
僕は、それを黙って見ていた。
...Aのこの異変は、もう疑いようのないものだ。
さっきも男ばかりの中で一人で大丈夫か、部屋を別に用意しようかと申し出てくれた真白さんを「別にいい」と一刀両断。
真白さんと冬夜さんに対するその普段からは想像もできない冷え切った対応。
僕らには普段通り...だけど。
でもそれも、何処か空元気のように見える。
「ああ、構わねえぜ」
「失礼します」
仮にも家主であるのに、律儀に兼さんの返事を待った真白さんがゆっくりと戸を開ける。その後ろには冬夜さんもいた。
「お茶持ってきました。この頃から夜分は少しずつ喉が乾いてくるので。それから...」
「夜食!大福買ってきたぜ!」
「大福!!」
「おお...!」
"大福"というワードにバキューム吉...じゃなくて食欲旺盛な陸奥守さんと、大福を好物とする蜻蛉切さんが目を輝かせる。
それにはしゃぐ陸奥守さんに再び溜息を吐きながら、兼さんは二人に声をかけた。
「悪いな、何やら何まで...」
「いえいえ。...ここだけの話、私も冬夜も少し気分が上がってしまってて」
「そうなのか?」
「はい。いつもこの家には私達二人だけなので...。こんなに大勢の方達が家に居るのは久しいんです」
そう何処か懐かしそうに笑う真白さんに僕が再び胸をざわつかせると、早速大福を頬張る鶴丸さんが、まるでその胸中を代弁するように口を開いた。
「さっきも気になってたんだが…この家に住んでるのはきみ達だけなんだろう?親や他の家族はどうしたんだ?」
「...」
その問いにどくん、と心臓が静かに鳴った。理由は分からない。でも...
脳裏を掠めた、雪髪の少女の姿。
彼女に似ている真白さんは、困ったように小さく笑った。
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「家族は、いません。
全員死にました」
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狩歌(プロフ) - 作者さん» 私も作者さんのコメントで大泣きしました。ありがとうございます...!! (2020年2月14日 8時) (レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
作者 - 大泣きした…もうやばい…語彙力低下した… (2020年2月14日 1時) (レス) id: 514b4bbba8 (このIDを非表示/違反報告)
狩歌(プロフ) - かふぇいんさん» 告白されちった(違う)。そんなこと言っていただけて感無量です。ありがとうございます!リクエスト了解しました!もうしばしお待ちください! (2019年2月10日 22時) (レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
かふぇいん(プロフ) - 連続でコメントすみません…!夢主ちゃんの質問コーナーみたいな茶番が見たいです。ぜひお願いします! (2019年2月10日 22時) (レス) id: 67bbfad4af (このIDを非表示/違反報告)
かふぇいん(プロフ) - すき。すきです。すきしかでてこないです。これからも心から応援してますッ…! (2019年2月10日 22時) (レス) id: 67bbfad4af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:狩歌 | 作成日時:2018年12月28日 13時