ねえ、 ページ1
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墨を塗りたくったような黒い空に一際大きく膨れ上がったその赤が、やけに美しく映えて見えた。
本来なら美しくなんてないそれを美しいなんて感じてしまうのは、僕の感情感覚が麻痺してしまった証拠なのだろうか。
「どうなってやがんだ...主が観測した乱れじゃこいつらが来るのは明日だったじゃねえか...！」
「とにかく町の奴らを避難させるぞ!!」
響き渡る悲鳴、飛び交う怒号、崩れ去る建物。
血の匂い、膨れ上がる炎、赤、紅、朱。
その中で暴れる時間遡行軍を倒すために、僕らは刀を振るう。
"時間遡行軍の攻撃が早まった"。
その事実はそれ以上でもそれ以下でもなくて、でもだからこそ僕らは動揺した。
僕らを動揺させるには、充分だった。
「早く逃げぇ！あっちじゃ！」
それでもやるべきことは変わらない。歴史を守る。だから刀を振るう。
...だけど。
「A殿!!」
「っ！」
蜻蛉切さんのそんな切羽詰まった声に僕が振り返ったときが、ちょうど大太刀がAに刀を振り下ろした瞬間だった。
ひゅ、と息が止まる。全てがゆっくりに見える。
それを断ち切るような鮮やかな紫電が、黒と赤の世界に走った。
呆気なく首と胴体を切り離された大太刀が砂のように消え去る。
黒と赤の鮮やかな世界に、色を持たないそいつはぼんやりと浮かび上がっていた。
「...A...？」
誰ともなく呼んだ名前に、そいつは反応を示さない。
目深に被ったフードの奥の表情は伺えない。
「...A」
どんなことがあっても、僕らがやるべきことは変わらない。
それでもあいつにとっては、この時ばかりはそうでなかったのだろうと後になって思う。
「...殺す」
Aが普段からは想像もつかないほど低く唸り刀を構えた瞬間、ぱさりとフードが外れそいつの表情が見えた。
いつもころころと変わる表情に、今は笑顔など浮かんでいない。
幻想的な紫水晶の瞳には光などない。
あるのはただ、どうしようもない怒りと悲しみだった。
「A!!」
兼さんが叫ぶと同時に、Aは一直線に既に半壊し炎が立ち上る家屋へと駆け出して行った。
その時のあいつの表情を、
あいつの叫びを、僕はきっと忘れることができない。
「＿＿＿！＿＿＿!!」
それは多分...いや、その叫びはきっと、
あいつの後悔で、懺悔で、願いだったはずだから。
ねえ、A、
君は＿＿＿
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狩歌(プロフ) - 作者さん» 私も作者さんのコメントで大泣きしました。ありがとうございます...！！ (2020年2月14日 8時) (
レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
作者 - 大泣きした…もうやばい…語彙力低下した… (2020年2月14日 1時) (レス) id: 514b4bbba8 (このIDを非表示/違反報告)
狩歌(プロフ) - かふぇいんさん» 告白されちった(違う)。そんなこと言っていただけて感無量です。ありがとうございます！リクエスト了解しました！もうしばしお待ちください！ (2019年2月10日 22時) (レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
かふぇいん(プロフ) - 連続でコメントすみません…！夢主ちゃんの質問コーナーみたいな茶番が見たいです。ぜひお願いします！ (2019年2月10日 22時) (レス) id: 67bbfad4af (このIDを非表示/違反報告)
かふぇいん(プロフ) - すき。すきです。すきしかでてこないです。これからも心から応援してますッ…！ (2019年2月10日 22時) (レス) id: 67bbfad4af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狩歌 | 作成日時：2018年12月28日 13時
