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守るもの ページ23

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真白さんの話を聞いている間、多分僕は息をすることを忘れていた。





顔も声も温度も覚えてる。

別にあの子は僕の主だったわけじゃない。

でも、覚えてる。



普通に生きて、幸せになるんだと思ってた。



それなのに。






あの子は、鬼に殺された。




本当なら今ここで笑っているはずだったのに、


__もう、いない。





「_それから生き残った人達は町を再建したり他の町に移ったりして...私達は後者で、今ここにいます」


真白さんが語り終え、辺りがしんと静まり返った。

やがて音がない時が止まったようなその空間は、夜の帳に浮かび上がった月の光が射し込んだことでゆっくりと動き出す。


「...すみません、あんまり気分の良い話ではなかったですよね」


困ったように笑った真白さんに、兼さんがゆるゆると首を振って口を開いた。


「...話してほしいって言ったのは俺達だ、覚悟は出来てた。...こっちこそ悪かったな」

「大丈夫ですよ」

「...兼定さん」


扉の付近に立っていた冬夜さんが、兼さんの名を呼んで部屋に足を踏み入れた。

冬夜さんは彼を見上げる僕ら全員に目を向けると、最後に兼さんに顔を見る。

灰紫の瞳が鈍く光る。


「...もしも、」


声が震えていた。


「もしもあんたらに鬼を倒す力があるなら、どうか、」


そこに込められているのは、後悔か、懺悔か、願いか。





「もう二度と、あの悲劇を繰り返さないように」




「...ああ、任せろ」




僕らの思いを代表して頷いた兼さんに、冬夜さんは安心したようにふっと笑った。


「ま、それであんたらに死なれても困るけどな」

「そんなヘマしねえよ」

「ふふ。
...さて、それじゃあそろそろ私達は失礼しますね。皆さんもゆっくり休んでください」


おやすみなさいと部屋を去っていく二人を見送って、やがて二人の足音が一階に消える。

と、蜻蛉切さんが口を開いた。


「こんのすけ、十年前に彼らの家族を襲った鬼は本当に時間遡行軍なのか?」

「いえ、妖の鬼です。当時時の政府は陰陽省として存在していたので、記録が残っています」

「...つまりあいつらにとって遡行軍は家族の仇っていうわけじゃねえが...」


ちらと兼さんに視線を向けた薬研さんが、少し悪戯っぽく笑って言った。


「...なんだよ」

「隊長さんが任せろって言っちまったからな」


バツが悪そうにそっぽを向く兼さんに皆が柔らかい笑みを浮かべる。






僕らに、負けられない理由がもう一つできた。


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『憧れだった人』→←昔話〈弐〉



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狩歌(プロフ) - 作者さん» 私も作者さんのコメントで大泣きしました。ありがとうございます...!! (2020年2月14日 8時) (レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
作者 - 大泣きした…もうやばい…語彙力低下した… (2020年2月14日 1時) (レス) id: 514b4bbba8 (このIDを非表示/違反報告)
狩歌(プロフ) - かふぇいんさん» 告白されちった(違う)。そんなこと言っていただけて感無量です。ありがとうございます!リクエスト了解しました!もうしばしお待ちください! (2019年2月10日 22時) (レス) id: 8b0337ee0c (このIDを非表示/違反報告)
かふぇいん(プロフ) - 連続でコメントすみません…!夢主ちゃんの質問コーナーみたいな茶番が見たいです。ぜひお願いします! (2019年2月10日 22時) (レス) id: 67bbfad4af (このIDを非表示/違反報告)
かふぇいん(プロフ) - すき。すきです。すきしかでてこないです。これからも心から応援してますッ…! (2019年2月10日 22時) (レス) id: 67bbfad4af (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狩歌 | 作成日時:2018年12月28日 13時

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