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・・・
ショッピングモールを出て、両手に提げたたくさんの買い物袋をガサガサとならしながら先輩について行く。


『あっ、ありがとうございます!重くないですか?』
タ「平気だよ」
先輩が私の左手から買い物袋を取り、手を握ってくれた。

なんだかデートみたいだな。
最近読んだ少女漫画のワンシーンを思い出して、足取りが軽くなる。


・・・
タ「ここだよ」
着いたのは、人気(ひとけ)のない、隠れ家っぽいカフェだった。白レンガの壁とアーチ型の大きな窓が、ドールハウスみたいで可愛らしい。ふわっと香る甘い匂いに心が踊った。

小窓のついたドアを押すと、からんからん、と小気味よいベルの音が鳴った。先輩に続いて中に入り、店内を見回す。



『わあ、水槽がある…!』
奥の方に大きな水槽が置かれていて、色とりどりの観賞魚が悠々と泳いでいる。

タ「ふふ、水槽の近くの席にしようか」
『はい…!』

オレンジ色の照明に照らされ、落ち着いた雰囲気の店内を進む。
1番奥の、水槽がよく見えるソファ席に座った。


・・・
美味しそうな軽食、色とりどりのスイーツ、たくさんの種類の紅茶、それから珈琲。メニューがすごく充実している。

タ「注文は決まったかい?」
『決まりました』

私は旬の果物がたっぷり載ったタルトとニルギリティーを、先輩はベリー系の果物が散りばめられたチョコケーキとルフナティーを注文した。


・・・
「お待たせ致しました」
ウェイターさんがケーキを並べ、紅茶を注いでくれた。


『いただきます』
タルトをひとくち食べる。さくさくの生地とみずみずしい果物がマッチしていて、美味しい。

『このタルト、すっごく美味しいです』
タ「それは良かったよ。君はここのスイーツを好むと思ったんだ」
『嬉しいです…!』

先輩がここでお茶をしながら私のことを考えて、今日誘ってくれたのだと想像すると、嬉しくて、でも少し照れくさくて、胸がうずいた。




・・・
タルトを食べる手を止め、ふと、先輩のほうを見る。

タ「ひとくち食べるかい?」

私の視線に気づいたのか、ケーキにフォークを入れた先輩が言う。確かに、先輩のケーキもすごく美味しそうだ。
『じゃあ、お言葉に甘えて』

ケーキを載せてもらうため自分のお皿を移動させようとすると、先輩がケーキの刺さったフォークをこちらに向けた。



…あーんってこと?
固まる私に、微笑む先輩。

「召し上がれ」







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作者名:winter | 作成日時:2022年8月13日 2時

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