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勢い良く開かれたままの障子を、ただ眺める。
そこから吹く風は、氷のように冷たい。






まさか、部下が。Aが、自分を――
未だ衝撃にこの身を打たれている俺は、呆けるしか無かった。
女は、この部屋を飛び出し見えなくなる瞬間まで、ずっと笑っていた。
何故か、笑っていた。理由は、わからない




「クソ、わかるわけねぇ」




俺のアイツへの感情も、涙さえ見せなかった女の想いも、別の女のことが頭から離れない理由も、自分が今、どうすれば良いのかも。




「アンタ、馬鹿なんですかィ?」



 


声が聞こえた。
その方を見ると、柱によりかかり俺を睨みつける沖田総悟の姿があった。





「また、あの日と同じことをするつもりなのかよ」



「…五月蝿え」



「泣いた女を捨てて、わからないのを言い訳にして、ただ座ってんのがアンタのやり方ってんなら俺が追いやす」





泣いていた?Aが?
馬鹿な、笑っていた筈だ。ずっと



「表面上でいくら取り繕っても、アイツの心はずっと泣いてやした。
それにも気付けねえのならアンタに追う資格は無ぇ」





野郎の言葉が、腑に落ちた。
逃げ出した女を見て、ピクリとも足が動かない己より、コイツのほうが何倍もいいのではないか。




「アンタ、Aが告白してからずっと、姉上のこと考えていやしたよね。振るときでさえも。
最低でさァ。Aにも、姉上にも」





もう話すことはないとでも言うように俺を一瞥し、くるりと半回転。
総悟は、長い廊下へ足を踏み出す



「これでも分かんねぇとかほざくんなら、精々そこで指咥えて死んでてくだせぇ」


「…待て。俺が行く」




自然と口からこぼれた言葉を引き金に、固まっていた脚を奮い立たせ、躊躇うことなく立ち上がる





「確かに俺にはアイツを追いかける資格なんざ無ぇよ。だからこそ、今行かないでどうするんだって話だろ」




総悟はそのまま振り返ることなく立ち去った。
俺は野郎に背を向け、走る

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作者名: | 作成日時:2022年10月22日 19時

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