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「うおっ、あぶねぇ…」
間一髪、ぶつかる前に立ち止まる。
藍色の傘の下から見えた顔は見知ったものであった。
「っ、すみません…って銀時?やだ、濡れてるじゃない!傘は?」
「あったら態々走って帰るかよ」
「コンビニで買う…お金があるわけないわね、余計なこと聞いた」
ごめん、と茶々を入れながら平謝りする女、Aを
「傘買う金くらいあらァ。パチ屋でスる前はな」と軽くあしらいつつ、
桔梗の花がしおらしく咲いている、いかにもコイツらしい雨具を見遣る
こうして話している間にも雨は強く降りしきる。
早いところ帰宅したい筈なのだがどうにも体が動こうとしない。それは間違いなく、この女が原因である
「しょうがないわね、入れてあげる。ホラ」
と、背伸びをして俺の頭に落ちる雨を凌ごうとする彼女の姿に思わず笑いが溢れる
可愛らしい、なんて言葉を俺が使うと他意があるようにきこえるかもしれねェな
まァ、どうしようも無いほどに触れたくなったのは事実だが
「馬鹿、それだとお前が濡れちまうだろ。傘、貸せよ」
「わっ、有難う」
Aの手から傘の柄を奪い、彼女が濡れないようにと少し傾ける
普段よりも格段に近い距離と触れ合う肩。これ、ヤバいかも…
…ちょっと触れたくらいで何だ、動揺すんな、カッコ悪ィぞ俺!!
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作者名:慎 | 作成日時:2022年10月22日 19時