23.光とガラス ページ24
いきなり始まった北海道旅行。ただでさえ寒い季節に訪れる観光客は私たちくらいだろう。
予約先の旅館に着く時には４人の睫毛が凍っていた。
この旅行を計画したのは悟。提案したのは硝子らしい。
悟はともかく、硝子が旅行を提案するのは予想外だった。彼女は旅行に淡泊だと思っていたからだ。
とはいえ、５月に傑とホテルに行った時に(語弊)、皆と修学旅行がしたいなあと思っていたので嬉しい。
｢じゃ、また後で｣
悟から鍵を貰って、硝子と2人部屋に入った後。硝子がトイレに入ったところを見計らって、私は携帯を取り出した。そして、冥先輩に電話をかけた。
｢はい。はい…それでは。｣
｢＿＿本当に良かったの？｣
後ろから硝子の声がした。どうやら全て聞こえていたらしい。
硝子が広縁の椅子に座って言った。
｢噂では■■さんは、米国の政府と裏で繋がってる特級術師だ。そんな凄い人に期待されるのは滅多にないよ｣
｢いいの。私だって、特級術師は完璧な強さを誇る人になってほしいし。｣
そう。私は、特級術師の推薦を断ったのだ。
特級術師になれないのが分かったのは、猿謡との戦いが終わって直ぐだった。なけなしの希望を抱いて今までやってきたが、やっと覚悟を決められた。
｢Aは特級術師になって何がしたかった？｣
｢それ、悟にも言われた。正直…分からない。私、何になりたいんだろう。｣
｢夏油が目標なんじゃ？｣
｢それは術師として強くなるための第一目標ね。最終目標は悟。でも今はそれすら怪しい｣
｢アハ。大変だね｣
お前は何がしたいんだよ、とあの日の悟が私に言う。
…そうだな。強いて言うならば。
｢この力には限界がある。だからこそ、その時の自分にとって最善の選択をして生きていきたい。
例えその先で後悔しても、私なら乗り越えられるから。｣
｢…かっこいいね。A｣
｢そ！そうかな？｣
硝子に褒められると調子狂うなあ。
｢ねえ、A。強くなりたいのは、アンタだけじゃないよ。｣
ふと、硝子の声色が変わった。窓辺から雪景色を眺めるその横顔は儚く、強さと脆さを秘めた黒い瞳が、髪の隙間で見据えている。
｢Aはこの１年で２回も死にそうになった。なのに私は、何もできなかった｣
｢そんな！硝子は何も｣
｢何もしてないからいけないんだよ。｣
硝子と目が合った。いつもと変わらない顔。
…でも、なぜだろう。
私にしか見えない涙を流しているように見えて、思わず彼女を抱きしめた。
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tomishiro(プロフ) - 佝僂さん» はわー！？とっても嬉しいです！おかげで頑張れそうです！ありがとうございます！ (2022年7月13日 11時) (
レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
佝僂(プロフ) - めっちゃ面白いです！！！更新頑張ってください！！ (2022年7月13日 10時) (レス) @page12 id: 1c770a8388 (このIDを非表示/違反報告)
tomishiro(プロフ) - ぜひ評価の方もよろしくお願い致します！ (2022年7月13日 9時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：とみしろ | 作成日時：2022年7月7日 20時
