30.犬猿̶の仲 ページ31
目的地に着いた。そこは険しい森の中。
大きな滝が岩を叩き付ける音がする。
「その先に準一級呪霊がいる」と悟くんは言った。
車では不安定な道を移動できないので、
私と補助監督さんはここで待機することになった。
傑くんと悟くんが車を降りて、窓越しに補助監督さんと安全確認をする。
「私たちは帳を作ります。電波も通じているし、森の中なら隠れるのも容易いので、無理だったら帰還します。A、来ちゃダメだよ。夕方になるかもしれないし。」
「…でも、」
「頼むから。」
それ以上を口に出すことはできないまま、
補助監督さんが窓を閉めた。
「何してるんだ、あの呪霊…」
『いいヒヒヒッ』
「おうおう。何がそんなに面白いのやら。」
五条と夏油の目に映るのは、滝の上流で
2人の気配を察知したのか、突然奇妙に笑った。
滝のせいで上手く聞こえないが、耳に触る声だというのは分かる。
「攻撃を仕掛けてこねえな。滝行なら、混ぜてくれよ!」
「なっ」
突然、五条が足元にあった小石を呪霊に向かって投げつけた。見事に額にぶち当たり、穏やかだったはずの顔が湧き上がる怒りに唇を震わせていく。
『ギリギリギリギリ!!』
「げ!歯ぎしりすんな馬鹿!」
「馬鹿はお前だ!」
「っで!」
夏油の拳が五条の頭に振り落ちた。
2人は4月中に準2級・2級を倒し、合同任務を通じてお互いの実力が似ていることに気づいたが…任務の中で息が合うことは未だ無い。
ついさっきAの前で格好つけてしまったが、夏油は既に後悔していた。
「んな渋い顔すんなよ〜最強なんだろ?笑」
「からかわないでくれ。今落ち込んでるんだ」
『オアアアアアァ!!!』
ドッシャアン!!
怒りに赤面した呪霊が両手を握って振り下ろすと、
なんと滝を真っ二つに
夏油の拳とはまるで違う、本物の殺意が飛沫を上げる。
「相手の術式は何だ?」
「それ毎回俺が言うの?」
「勿体ぶるな。今は私たちが不利だ」
「ヘイヘイ。″音の操作で五感を鈍らせる術式″だ。規模がデカい術式なのに川を跨いでも結界を張らないってことは、俺たちは既に生得領域の中。」
「なるほど、道理でぼやける訳だ。じゃあ今日は悟に判断を任せる。下手なことはするなよ。」
「ククッ任せなさい」
男と入水は願い下げだ。
六眼と無限を持つ男が、そう言った。
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tomishiro(プロフ) - また、本作はバトル描写が中心であり、恋愛描写は続編で明確になります。後者をご希望の方はもう少しお時間を頂きます。どうかご確認下さい。(こんなとこで話してますけど) (2022年6月20日 1時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
karenyoshi0308(プロフ) - 八重はいつか夏油と結ばれるんですか?ってコメント頂いたんですけど、難しいところです。 (2022年6月19日 22時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とみしろ x他1人 | 作成日時:2022年6月3日 10時