4.鍛錬 ページ5
呪術は、呪いで呪いを制する
呪術の鍛錬と聞いて、最初に浮かぶのは読経と写経、滝修行その他もろもろだ。しかし。
「ハハッ、お前案外いけるな!」
「それはどうも!」
「なんだかんだアイツら相性いいな」
我らが呪術高専がやる鍛錬は、バチバチの格闘技だ。
目の前で男二人が投げ合っている姿を見る。
初対面なのに容赦なく拳を突きつける光景に目眩がする。お互い怪我はしない範囲内らしい。
次、五条悟の相手は私だ。正直勝てる気がしない。
2人の勝敗が今日のうちにつかないまま日が暮れることを願っていると、自販機で飲み物を買ってきた硝子ちゃんが私に話しかけた。
「そういえば、Aの術式って何なの?」
「太陽光を使う術式だよ。ソーラーパネルみたいにいつでも体力温存できるから、最低限の呪力量で長期戦に有利。」
「へえ。でも、呪術は夜がメインだよ。空が曇ってたらどうするの?」
「それはねー…うわ!」
突然目の前が真っ暗になる。
そこには傑くんの背中があった。あと一歩で私の顔面が潰れるところを、傑くんが壁に両手をついて何とか免れる。
「おっと、ごめんね。A、大丈夫?」
すごい。こんなに汗かいてるのに臭わない。
どんな制汗剤を使っているのだろう。
ほぼ無意識に頷いた私を尻目に安堵した後、傑くんは子供を叱るような口調で五条悟に叫んだ。
「悟!強く当たりすぎだ。」
「邪魔な場所にいるのがいけないんじゃん。続きやろーぜ、傑。」
「残念だけどもう時間だ。続きはAが相手だ。」
「!?」
優等生勘弁!
あー?と歯切れが悪そうに頭を搔く白髪頭と目が合う。白髪はわざとらしく深いため息を吐いた後、眉を八の字にして嘲笑った。
「おいおい、こんなん見るからに弱えって。ザコの相手してもへばるだけだろ。」
「クズが。」
隣で静かに、ただし聞こえるように舌打ちを放った硝子ちゃんに驚く。
それでも逃れられない空気感に後押しされた私は、開き直って五条悟の目の前に堂々と立った。
「手加減してやるよ。泣かねえようにな。」
ここは広い武道場。
カーテンによって陽の光は閉ざされている。
五条悟は眼が良い。
彼に抵抗するなら、圧倒的な力量差か、突破口を作るのが得策だろう。
どれも私にはできない。勝つことは考えない方が良い。
だが、
キュッと裸足の踵が鳴った。
47人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
tomishiro(プロフ) - また、本作はバトル描写が中心であり、恋愛描写は続編で明確になります。後者をご希望の方はもう少しお時間を頂きます。どうかご確認下さい。(こんなとこで話してますけど) (2022年6月20日 1時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
karenyoshi0308(プロフ) - 八重はいつか夏油と結ばれるんですか?ってコメント頂いたんですけど、難しいところです。 (2022年6月19日 22時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:とみしろ x他1人 | 作成日時:2022年6月3日 10時