#057 α ページ27
部屋に戻ると、まだAはいなかった。
そのことにホッとするが…
まだ、頭の混乱は解けない。
「…ウシワカちゃん、だよね？この背中…。」
Aの隣に、並んで立つ男の姿。
写真だというのに、二人の関係が
”友達以上のもの”であると伝わってくる。
もし………
Aの奪いきれていない心の正体が…
”こいつ”の存在としたら……？
オレは、勝てるの？…奪えるの？
「………。」
一人、部屋の中で頭を悩ませる。
その時、携帯がメッセージが届いたことを知らせた。
渋々、画面を見るとメッセージは岩ちゃんからで…
【早く来い】…と。
もう、こんな時間か…。
食欲はないが…、練習についていくためには
食べなければいけない。
写真をベッドの真ん中にわざと置いて、
部屋を飛び出した。
_____________________________________
「…いただきます。」
昨日は美味しかった筈の食事も、
今日は何も感じない。
「隣、いいですかー？及川さん。」
「…！」
ニコニコと満面の笑みで、隣に座る沙美田 シュリ。
「あ、ちなみに。AAさんは、日向くんの看病なのでいないよ。」
「…あっそ。」
機械的に、食べ物を体内に入れる。
「…及川さんは、牛島若利さんを知っているんですよね？」
「……。」
「バレーでぶつかって…けど、及川さんの実力じゃあ…勝てなくて…。」
黙ったままの及川。
「そして、彼女さんもまた取られるんじゃないですか？だって元カレですよ？」
「おい。」
沙美田 シュリの一方的な攻撃に、口を挟んだのは及川ではなく、影山だった。
「それ以上、及川さんを責めんな。」
「あ！君にも及川さんは勝てないんだよね？」
「…いいかげんにしろ！！」
影山が怒りを露わにする。
そのせいで、周りの注目を一身に集める沙美田 シュリ。
「…もういいよ。飛雄ちゃん。」
及川が口を開いた。
反論を一向にしない及川に、驚きを隠せない影山。
「…けど…！」
「ありがとうね。…それにもう、食べ終わったし、帰るよ。」
そう言って、席を立つ及川。
「そんなの…そんなの及川さんらしくないですよ！！」
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作者名：色葉怜 | 作者ホームページ：http://uranai
作成日時：2014年12月31日 22時
