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それから半月後のことだった。
金曜日。私がフリーダムでカレーを食べていると、ドアベルが鳴った。
反射的に顔を上げると、いつぞやリボンを拾ってくれた赤髪の男性だった。
「この前は、本当にありがとうございました」
真っ先に、その言葉が出た。
男の人は、きょとんとした顔で私を見つめたが、髪に結われた赤いリボンを見て思い出したように首を振った。
「前にも言ったが、偶然拾っただけだ。お礼を言われるほどのことじゃない」
「でもこれ、私にとって本当に大切なものなんです。会うたびにお礼を言わなきゃ、私の気がすみません」
真剣な顔で言った私に、男の人は困ったように返した。
「なら、ありがたくその気持ちを受け取っておく。だから、会うたびには言うな」
「はい!」
優しい男の人の返答に、私は笑顔でうなずいた。
良い人に拾ってもらえてよかった。
その様子をほほえましく見ていたおやじさんが、タイミングよく声をかけた。
「織田作ちゃん、いつものでいいかい?」
「ああ」
一つ開けて隣に座る『織田作ちゃん』と呼ばれた男の人。
私は、食べる手を止めて問いかけた。
「織田作って、変わった苗字なんですね。私、岡咲っていう苗字なんですけど、ザキが、花が咲くとかの『咲』なので、よく珍しいって言われるんですよ」
それを聞いたおやじさんが、声をあげて笑った。
「岡ちゃん、織田作ちゃんの苗字は『織田』だよ。織田作は、愛称」
「なるほど!ちなみに、フルネームはなんていうんですか?私は、岡咲Aです」
「織田作之助だ」
織田作が、おやじさんからカレーを受け取りながら答えた。
「ああ、だから織田作さん!!じゃあ、これからカレー友達としてよろしくお願いします!」
そう言って差し出した手を、奇妙なものを見る目で見つめる織田さん。
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作者名:あき | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fallHP/
作成日時:2020年1月29日 20時