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「おやじさん。久しぶり〜」
火曜日。フリーダムのドアを開けると、おやじさんが驚いたようにこちらを見る。
「お、岡ちゃん。けがは大丈夫なのかい?」
視線が向けられているのは、私の右手。
織田さんと遊園地に行ったその日。私は帰り道で襲われた。
以前、織田さんの『仕事』だった相手のチンピラだったと、あとで聞いた。
理由は復讐。私の頭脳と、織田さんの力を利用して、ポートマフィアに何かしら仕返しがしたかったのだという。
おじさん仕込みの護衛術で抵抗した際、少ししくじって腕を折られてしまったのだ。
その後、運よく通行人の方に助けられたが、私の連絡を受けて病院に駆けつけてくれた織田さんは、私が襲われた経緯を知り、激しく後悔をしていた。
検査入院で異常は見つからなかったが、しばらく安心はできないと、外出は禁止。大学までもおじさんの会社の戦闘向きの社員さんが護衛をしてくれていた。
これを機に、家に戻るよ言われ、私はそれに従った。
故に、フリーダムからも足が遠のいてしまっていた。
「まだちょっと痛むけど、もう大丈夫。それより、織田さんの方が心配かな」
三角巾につられた、包帯ぐるぐるの右手を持ち上げて言う。
おやじさんは『織田さん』という言葉に反応し、暗く肩を落として曖昧な返事をした。
「ああ……」
「おやじさん。いつものカレーお願い」
重い空気を換えるように言う。
「あいよ」
おやじさんはうなずき、私はおやじさんの前の席に座った。
「織田さん、最近来てます?」
「来てるよ。けど、火曜日と金曜には来ないね」
「やっぱり。ありがとうございます」
おやじさんからカレーを受け取り、まだ慣れない左手で食べる。
「織田作ちゃんに何か言われたのかい?」
「検査入院してるとき、『少し距離を置こう』って」
「……そうかい」
「織田さんのせいじゃないのに。私の頭を利用しようとしてくる人は、今までにもいたんです。兄ちゃんより、頭の出来は悪いから、狙われやすいこともわかっています」
兄ちゃんは、敵が来る前に、敵の居場所を見つけられる。
それに対して私は、敵がいる化外に気づいてからしか、敵の居場所を見つけられない。
だから、おじさんは私に護身術を教えた。一人でも、自分の身を守れるように。
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作者名:あき | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fallHP/
作成日時:2020年1月29日 20時