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それから、半月がたった。
「また来ない……」
「そうだねぇ」
食後の何杯目かの珈琲を飲みながら、私はぽつりとこぼした。
おやじさんも、どこか同情した目を向けてくる。
この半月、私ははいつもの曜日、いつもの時間に来ている。
だが、織田さんに遭遇することはなかった。
思えば、織田さんと初めて会ってすでに二か月が経とうとしているのに、うち会えたのは二回。
月に一度会える人と思えばそうなのだが、ようやくカレーについて語れる人ができたのに、その人に会えないなんてとても寂しい。
毎週、毎回楽しみにしながら、フリーダムへやって来ては、今まで以上に店に滞在するのだが、いくら待っても織田さんが来店することはなかった。
「ヨコハマでおいしいカレー屋さん、いっぱい知ってるのに」
珈琲を飲み干し、ため息を一つ付いた。
一緒に行きたいカレー屋さん、たくさんあるんだけどなぁと、ついでに独り言ちる。
洗ったお皿を拭きながら、親爺さんが聞く。
「そういえば、岡ちゃん、週に何回カレーを食べてるの?」
そう問いかけられ、無言で珈琲のお代わりをねだりながら、私は答えた。
「うーん……4,5回くらいかなぁ。休日以外のお昼は大体カレーだし……」
「休日は食べないんだね」
珈琲をカップに注ぎながら、おやじさんは意外そうに言った。
「うん。おじさんのとこに帰るから。あ、でもたまに、兄ちゃんの手伝いで外に出た時に、食べたりするよ。そうそう!!そこの喫茶店のカレーもこれまた絶品で、それに珈琲もすっごくおいしいんだよねぇ」
その喫茶店の珈琲とカレーの味を思い出しながらカップを受け取り、砂糖とミルクを入れた。
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作者名:あき | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fallHP/
作成日時:2020年1月29日 20時