【文豪ストレイドッグス】人形劇と海の星

第30幕 ページ32

知らない。

私は誰だ？

此処は何処だ？

どうして此処に居るんだ？

確か、私の名前はNo.3だったはずなのに。

ポートマフィアの構成員だったはずなのに。

どうして探偵社なんかにいて、皆が私のことをAなんて呼ぶんだろう？

何もわからないや。

真っ暗で、静かで、私1人しかいなくて。

でも、待って。

あの背中は？

黒い獣を従わせた、あの背中は？

見える、見える。

ただ一つ、あの背中だけが。

「待って！」

その背中は振り返らない。

「……芥川さんッ！」

私の悲痛な声が響く。

あの人は、芥川さんっていうんだっけ。

待って、また、一人ぼっちはやだよ。






「Aちゃん！」

目が覚めた。

この包帯だらけの奴は誰だ？

「大丈夫かい？いきなり倒れたのだよ？」

急に吐き気がした。

頭が痛い。

目が回る。

芥川さん、太宰さん、海の星、田島、松井、江戸川さん、エリスちゃん、父さん、国木田さん、母さん、谷崎さん、ナオミちゃん、首領、珠恵(妹)……。

頭が割れる。

途切れ途切れの記憶が現れては消える。

気持ち悪い。

血溜まりのの中の記憶。

苦しくて伸ばした手が空を切る。

人を殺した記憶。

次第に全てが消えていって……。


嗚呼、私は誰だっけ。

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