怒り ページ21
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「やっぱり、迷惑でしたか」
人気の少ない体育館裏でAのそう言う声が静かに木霊する。北は咎められているような気持ちになりながらも、首を横に振った。Aは何も悪くない、悪いのは自分なのだ。
北は今にも泣きそうな苦しげな顔をするAに近づくと、何時ぞやのように頭の上で跳ねた寝癖を撫でた。
「迷惑やない。不快な思いさせてしもて、悪かったな」
「ちがっ……」
「でも、もう結婚してくれって言うのは今日までにしてくれへんか」
北がそう言うと、Aは目を大きく見開いて、薄く開いた口の隙間からえ、と言葉を漏らす。北から突然告げられた、初めての拒絶の言葉にAは柄にもなく戸惑っている。
今まで振られ続けているから、当然かもしれないが＿＿それでも、受け入れ難いことだった。
もう、自分が彼に想いを告げることを許されなくなることなんて。
それでも、Aは挫けることなく目の前の意中の人物に想いを告げるために猪突猛進に突っ込むのだ。
「でも、今日で最後なら、今日はどんだけ言うてもええですよね」
「……え」
「北さん、好きです。大好きです。結婚してください」
気付けば目からは大粒の涙が零れ落ちている。ボロボロと零れるそれは、地面に染みを作ってシャリと音を立てた。
これで最後、これで自分の北への恋も終わる。その事実が何よりAを苦しめたし、いっその事消えてしまいたいと思った。
でも、フラれるのなんて百も承知、だからこそ最後は皆の言う順序を守って想いを伝えたかった。
「おれは……Aがなんで自分に毎日告白してくんのか、分からんかった」
北は静かに自分の制服のポケットからハンカチを出すと、Aの目に優しく当てた。いつもと違う言葉を発する北に戸惑いながら、Aはされるがまま涙を拭かれる。
その後に続く北の最後の断り文句を聞くために。
「Aは誰にでも優しいええ子やし、挨拶もちゃんと出来て、箸の持ち方もキレーで……おれには勿体ない人間やのに」
「そ＿＿んな、勿体ない人間やなんて……!」
「いやおれなんかには、勿体ないんや。バレーもレギュラーやないし、Aの気持ちひとつも受け入れられる覚悟ないおれには」
その時、Aの目から涙がスっと引いて今まで溜まっていた色んな感情が怒りに変わった。その日は初めて、北に対して怒りが湧いた日だった。
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かなで(プロフ) - この間初めて読んだのですが、面白すぎて一気読みしてしまいました！評価ボタンが一つなのがとても惜しいです笑 これからも頑張ってください！ (2020年3月8日 15時) (
レス) id: e96d9c0e1e (このIDを非表示/違反報告)
ぴいち(プロフ) - 月埜さん» 月埜さん、コメントありがとうございます。連載当初から見ていただいて、こちらも感謝の気持ちでいっぱいです。最後までお付き合い頂きありがとうございました! (2020年2月26日 22時) (レス) id: f952b08383 (このIDを非表示/違反報告)
月埜(プロフ) - 完結おめでとうございます。公開初日から読ませて頂きました。月並みな言葉しか言えませんが、主ちゃんと北くんの関係が最初から最後まで本当に素敵だなと思いました。素敵なお話をありがとうございました！ (2020年2月26日 18時) (レス) id: d1ca7a883a (このIDを非表示/違反報告)
ぴいち(プロフ) - 柿山さん» 柿山さん今回もお目に止めて頂きありがとうございます!!真っ直ぐな主人公とそれを蔑ろにしてくれない北さんのモダモダした関係が続きますが、気長に読んでいただけたら嬉しいです! (2020年2月14日 10時) (レス) id: f952b08383 (このIDを非表示/違反報告)
柿山(プロフ) - あああ〜〜もう今回も今回とて好きです!!!夢主さんの北さんに対する真っ直ぐすぎる感情表現が堪りません…!!しかもそれを雑に扱うのではなく、丁寧且つスパッと対応する北さんの在り方も素晴らしいです!!!これからゆっくりと楽しみにしております…!!! (2020年2月13日 22時) (レス) id: 296b088bbe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴいち | 作成日時：2020年2月13日 21時
