思春期ですから ページ13
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「なにやっとん。そんなとこで」
アランはトイレから帰ってきたであろう北を見つけると首を傾げた。入口で固まって動かず、扉に突っ伏して項垂れている。その隙間から見えるいつも白い耳や顔は真っ赤に染まっていた。いつも体調管理には人一倍気を使っているはずの北が、だ。
「信介…?」
「あぁ、アランか」
「風邪引いたんか、顔真っ赤やぞ」
アランが良かれと思ってした指摘は、北にとってはドキリとするもの以外の何ものでもなく。その言葉に北の顔は余計に赤くなっていった。熟れた林檎のように赤くなった顔に、アランもワタワタと慌てる。自分が熱を上げてしまったのでは、と思ってのことだ。
「信介、熱あるんちゃうか!?」
「いや、大丈夫や…」
「でも、顔めっちゃ赤いで?」
心配そうにアランが北を覗き込むと、北は下唇を噛んで、すまんと言い残しアランの前から姿を消す。アランはその後ろ姿を追いかけることが出来ずに呆然と立ち尽くした。
顔を赤くして下唇を噛む顔が、いつも北に思いを告げる彼女にそっくりで―――
声を掛けたくても、掛けられなかったのだ。
北はアランの前から逃げ出すと、一人男子トイレの鏡の前に立つ。目の前では自分と同じ顔の男が顔を赤くしていた。北は何度も何度も顔を洗い、顔の赤を洗い流そうとする。
洗えば冷めるはず、あの光景も忘れるはず。
北は、頭の中に過ぎった邪念を何度も払うように顔を洗い続けた。
「…馬鹿か」
襟首がしっとりと濡れても、北の頭はこんがらがったままで―――
到底、あの時に感じた気持ちや思いに嘘がつけそうになかった。それは、北がトイレに行った十分前まで遡る。
「ちょお、トイレ行ってくるわ」
北のクラスの出店はたこ焼き屋であり、北と大耳、仕事が無くなったのでと手伝いに来た5組のアランで店の装飾を作っていた。長時間に及ぶ放課後の作業に催してきた北は二人にそう告げてトイレへ向かう。
その時、偶然北の前に現れたのは―――
制服を着た女子、では無く見かけない格好をした女子。いきなり飛び出してきて顔が分からなかったものの、かなり背の大きな女子だった。
北がギョッとして後ずさった時、彼女の前の窓から秋風が吹き込む。
「わっ!?」
ふわり、と持ち上がった短いスカートから見えたのは陶器のような白さながらも、柔らかそうな太腿。チラリと見えたのは北が見たことも無い女子のショーツ。思考回路が停止し、ピリリと指先が痺れたのが分かった。
そして、その相手がいつも自分に告白してくる女子だとわかった時、北の顔は最骨頂に赤くなるのだ。
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かなで(プロフ) - この間初めて読んだのですが、面白すぎて一気読みしてしまいました!評価ボタンが一つなのがとても惜しいです笑 これからも頑張ってください! (2020年3月8日 15時) (レス) id: e96d9c0e1e (このIDを非表示/違反報告)
ぴいち(プロフ) - 月埜さん» 月埜さん、コメントありがとうございます。連載当初から見ていただいて、こちらも感謝の気持ちでいっぱいです。最後までお付き合い頂きありがとうございました! (2020年2月26日 22時) (レス) id: f952b08383 (このIDを非表示/違反報告)
月埜(プロフ) - 完結おめでとうございます。公開初日から読ませて頂きました。月並みな言葉しか言えませんが、主ちゃんと北くんの関係が最初から最後まで本当に素敵だなと思いました。素敵なお話をありがとうございました! (2020年2月26日 18時) (レス) id: d1ca7a883a (このIDを非表示/違反報告)
ぴいち(プロフ) - 柿山さん» 柿山さん今回もお目に止めて頂きありがとうございます!!真っ直ぐな主人公とそれを蔑ろにしてくれない北さんのモダモダした関係が続きますが、気長に読んでいただけたら嬉しいです! (2020年2月14日 10時) (レス) id: f952b08383 (このIDを非表示/違反報告)
柿山(プロフ) - あああ〜〜もう今回も今回とて好きです!!!夢主さんの北さんに対する真っ直ぐすぎる感情表現が堪りません…!!しかもそれを雑に扱うのではなく、丁寧且つスパッと対応する北さんの在り方も素晴らしいです!!!これからゆっくりと楽しみにしております…!!! (2020年2月13日 22時) (レス) id: 296b088bbe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴいち | 作成日時:2020年2月13日 21時