意識してや ページ12
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「宮さん、ちょっとええか?」
「んあ、なにぃ?」
「宮さんに着てもらいたいもんがあんねん」
Aが告白して断られ続けているうちに、稲荷崎高校は文化祭の季節を迎えていた。稲荷崎高校はバレー部の他、吹奏楽部も強豪なせいか外部からの見学を許可している。
そして、各クラスでの出店という高校生には嬉しい企画もあってかAは初めて経験するそれに淡い期待を抱いていた。
―――もしかすると、北の出店姿を見られるのではないかと。
そして、あわよくば一分でもいいから彼と共に出店を回って食べ物を献上したいと。
「宮さんスタイルええから、絶対似合うわ!」
「それなんの話?」
「あら、またキタサンのこと考えてて話聞いてなかったん?文化祭の出店の話やで」
Aは図星を突かれて顔を赤くしながら出された服を手に取る。ピラ、とそれを広げて目を見張った。なんだ、これは。目の前に現れたのはヒラヒラとしたフリルがあしらわれた何とも甘すぎるコルセットのメイド服。
普段ジャージやらパンツスタイルの多いAは制服以外でこんなに丈の短いスカートを履いたことがない。
「ちょ、待ちや!!これ」
「手芸部の子が張り切って作ってくれてん、宮さんに似合うかな思て」
「そ、そらうれしいけど、私これ着んの!?」
「せや、宮さんのスタイルならどんな男もノーサツや」
その言葉にAはハッとする。正直乗り気では無かったが、悩殺という言葉だけが頭に残ってその中をグルグル巡る。男を悩殺、ということはあの北さんを振り向かせることが出来るかもしれない。そんな淡い恋心を抱く乙女の思考回路が暴発する。
「ありがたく、着させて頂きます」
「じゃあ、トイレで着替えて来てくれへん!?」
そう言ってAが押し込まれたのは三年の棟寄りにある女子トイレ。Aは個室に入ると服を脱ぎ、そのメイド服を身につけた。しかし、サイズが少しばかり小さい気がする。
元々痩せ型のAだが、元々空いていた胸元や丈の短いスカートが少し心許なく感じるのだ。
「アカン、これサイズがアカン」
Aは出るか出まいか迷いながらも、覚悟を決めて外へ出る。早く教室へ戻ってあの子に大丈夫か確認を取らねば。そう思い、Aが急いで女子トイレから飛び出した時―――
「A!?」
「き、北さん!?」
それはほんの偶然―――
急いで飛び出してきたAのスカートが風で揺れ、北の前で捲れ上がる。Aは口をパクパクさせながら恐る恐る北の方を見た。
そこには、いつもどんな言葉にも動じない北の真っ赤な顔があるだけだった。
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かなで(プロフ) - この間初めて読んだのですが、面白すぎて一気読みしてしまいました！評価ボタンが一つなのがとても惜しいです笑 これからも頑張ってください！ (2020年3月8日 15時) (
レス) id: e96d9c0e1e (このIDを非表示/違反報告)
ぴいち(プロフ) - 月埜さん» 月埜さん、コメントありがとうございます。連載当初から見ていただいて、こちらも感謝の気持ちでいっぱいです。最後までお付き合い頂きありがとうございました! (2020年2月26日 22時) (レス) id: f952b08383 (このIDを非表示/違反報告)
月埜(プロフ) - 完結おめでとうございます。公開初日から読ませて頂きました。月並みな言葉しか言えませんが、主ちゃんと北くんの関係が最初から最後まで本当に素敵だなと思いました。素敵なお話をありがとうございました！ (2020年2月26日 18時) (レス) id: d1ca7a883a (このIDを非表示/違反報告)
ぴいち(プロフ) - 柿山さん» 柿山さん今回もお目に止めて頂きありがとうございます!!真っ直ぐな主人公とそれを蔑ろにしてくれない北さんのモダモダした関係が続きますが、気長に読んでいただけたら嬉しいです! (2020年2月14日 10時) (レス) id: f952b08383 (このIDを非表示/違反報告)
柿山(プロフ) - あああ〜〜もう今回も今回とて好きです!!!夢主さんの北さんに対する真っ直ぐすぎる感情表現が堪りません…!!しかもそれを雑に扱うのではなく、丁寧且つスパッと対応する北さんの在り方も素晴らしいです!!!これからゆっくりと楽しみにしております…!!! (2020年2月13日 22時) (レス) id: 296b088bbe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴいち | 作成日時：2020年2月13日 21時
