酔狂な賭け事牡丹【男主】 (ページ29)

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第二十三章ページ29

オーナーと話をしてから、すでに三日が経った。

銃弾は解析は愚か、まだ見つかってすらいない。

思うように身動きが取れず、ただぼんやりと時を過ごすのは歯痒く、自分の無力さを痛感した。

胸の奥に溜まった黒墨を吐き出そうとしても吐き出しきれず、左胸の布をぎゅっと握り締めた。

『……あの人が死ぬ気なら、俺のこの心臓も止まってしまえばいいのに』

一度目は俺を呼び止めに来た、二度目は俺を救い出した。

三度目は――俺に「自由」という残酷な未来を与えて消えてしまった。

あれほど欲しかった自由は、それ以上の幸せを知ってからは要らないと思うようになった。

ある意味、「縛られることで手に入れられる幸せ」である。

雁字搦めに縛って、逃げられないようにして、独占欲の沼に浸からされて。

でもいつからか馬鹿になったみたいにさぁ。

それが心地よく感じるようになったんだよ、馬鹿野郎。

……あんたがいないと生きていけないようにしたのは、あんた自身なのに。

『は、……ははっ』

思わず笑いが漏れた。

ぐしゃりと綿を抜かれた人形のように、地面へと沈んだ。

おかしくて仕方がない、あいつが。

馬鹿らしくて仕方がない、俺が。

障壁なんてもうないものだと思っていたんだ、あいつも俺も。

もう一つの大事なものがそれを壊そうとするなんて、誰も予想出来ないんだから。

仕方がない、そうこの結果は仕方ないもの。

言い聞かせても言い聞かせても、喉のところまでせり上がった想いは溢れてこようとするんだ。

『……ホントに、馬鹿らし……っ！』

どうかもういっそのこと、早く俺を殺してくれ。

銃弾で俺の脳天を狙ってくれ、この心臓を刺して滅茶苦茶に弄んでくれ。

この想いで身が焼け焦げる前に。