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どうも、空弥です

今回はフィル目線の番外編となります

「酔狂な賭け事 牡丹」の四話以降は、この話を読んでからの方が分かりやすいかと思います

義兄弟の出会いの話です

二人共攻めくんなので、我の強いところを書くのが楽しかったです

今回は描写向上も兼ねて、隙間を開けない完全小説体になっておりますので、見にくかったらすみません(汗)

それでも大丈夫な方は先へお進みください
「柊、という言葉に聞き覚えはないか?」
カジノ内を見回っていた時。その男は、突然俺のカジノに現れた。ふいに肩を叩かれ、俺に相手をしてもらいたいキティでも居るのかと思って笑みを向けた瞬間、その表情は凍り付いた。それだけに、目の前に現れた異国の男は威圧感があったのである。
青色の装束、黒の羽織りを着た男。ボディガードを数人連れたその人は腰には何か細長いものが付いていて、それが日本の「刀」という武器だと理解するのに数分の時間を要した。俺が日本という国に対しての知識が少しでもなければ分からなかったことだろう。
服装は別の国のもの。その癖イタリア語は驚くほど流暢。鋭い眼光を称えたその表情に、ごくりと唾を飲み込んだ。
「……お客様。どうしたんです?」
「俺は客としてじゃ無くお前に聞いてる。もう一回だけ言う。柊、という言葉に聞き覚えはないか?」
ゆっくり、男の目が細められる。俺の容姿を舐めるように見る。男は腕を組み、細く息を吐き出した。とんとん、と腕の上で指が躍る。相反して彼の瞳の色は、その場の空気さえ飲み込んでしまうほどに。深海の如く、冷たい。
「答えろ、カジノのオーナー」
とん、と指が静止。その無表情は一瞬たりとも揺るがない。俺は覚悟を決めた。
「……ここで話すのも何ですから、俺の部屋に行きませんか?」
その言葉で何かを悟ったのだろう。男は「お前たちはカジノの外で待ってろ」と部下に促した。
俺は、もう一度カジノ内をぐるりとその場で見渡す。何か問題になりそうなことがある様子はない。大丈夫だ。それを確認した後、俺はもう一度男に向き直った。
「では、行きま……、どうかしました?」
男が遠くを見ている。その視線の先を追った。いた、一人の男。
……シエルだ。客に花の咲くような愛想良い笑顔を向けて、チップの山を渡している。青い瞳に栗色の髪。店指定のベストをきちんと着こなしたその男は、うちのカジノでも人気トップ3に入る優秀なディーラーだ。だが、急に黙りこくって、この着物の男に何があったのだろうか。
「お客様」
「……綺麗だ」
ぽつり、一言を吐き出した。そうしてもう一度「綺麗だ」と繰り返す。「何が」なのか。彼の仕草か、彼の振る舞いか、それとも彼自身か――
男はそれ以上、何も言わなかった。ただどこか惚けた顔でぼんやりとシエルを見ている様を見ると、心臓がぎゅ、と締め付けられる思いがした。何故だか分からない。ただ、「この男の瞳にシエルが映っている」というのが、堪らなく嫌だった。その熱っぽい視線に、吐き気がしそうだった。
「お客様」
ぐい、と腕を引いた。男はまるで夢から覚めたかのように、はっと我に返る。男の視線がこちらに向いた後、俺は無料サービスの笑顔を向けてやった。
「行きましょう、お客様」
「……嗚呼」
男の顔が無表情に戻る。それに、安堵してしまった俺がいた。


「……紹介が遅れた。俺は柊 葵だ。日本という国でクラブを率いている」
部屋についた時、男に名刺を渡されて自己紹介をされた。異国の言葉で書かれた名刺は珍しいものでくるくるとカードを返しながら見ていると、男は近くにあったソファにどっかりと腰掛けた。袂から葉巻を取りだして、火をつける。知らない火薬の臭いが鼻をついた。
「……クラブ?」
「クラブ」と男が言ったのを疑問に思い聞く。「率いるって、どのようなグループを?」と首を傾げると、葵さんは俺の発言を鼻で笑った。
「そんな生易しいものじゃ無いけどな。俺の仕事は、こっちの国で言う……。あー、あれだ。「マフィア」だ。……クラブと言うよりファミリーの方が表現として適切か」
肝が冷えた。いくらカジノが夜の街を賑わす闇社会に近い存在であったところで、マフィアとかそういう類はうちでは見かけない。ひく、と喉が引き攣る。でも、そう怖がってはいけない。俺はここのオーナーだ。しっかりしなくては。
「か、カジノのオーナーをやっています。俺は」
「フィル・シュラウド。……それくらい調べている」
きっぱりと言い切った葵さん。違う国で生活している俺の名を完璧に当ててしまえるとは。彼らが凄いのか、俺の個人情報が簡単に調べられるように出来ているのか……、まぁいい
「それで?俺をここに呼んだというのは、何か心当たりがあるんだろう?」
ふぅ、と紫煙を吐き出した葵さんは、俺を見て首を傾けた。
「教えてくれ、全部。探したい人が居るんだ」
探したい人?そのヒントを俺が持っているとでも?分からない、分からないが喋ることを喋ってしまえば、この男も満足して国へ帰るだろう。彼の目の前の椅子に腰掛けた後、俺は口を開いた。
「……俺の父さんの名前が、ヒイラギだった」
ぴくん、と男が反応したのが分かった。俺は構わず続ける。
「父さんは、俺が五つの時に居なくなった。母さんは旅に出たとか言ってたけど、帰ってきてはいない……。母さんは数年前に他界したから、父さんが本当に旅に出たかの確認はもう出来はしませんよ。国籍はよく分からなかったらしいですし、俺も名前しか覚えて無いですので、探すのは不可能です」
「……なんて名前だ」
ずい、と葵さんがこちらに身を乗り出した。その目が、真剣である。俺は、おずおずとたじろぎながら。
「……ヒイラギ マコト、ですけど」
「やっぱり」
何が?俺が眉を顰めると、葵さんは何度か意味深に頷いて。
俺に衝撃の一言を告げた。
「よく聞け、フィル。俺とお前は、腹違いの兄弟だ」
「……は」
「親父の本名は柊 真人。本来の柊家当主だ。何故かは知らないが、俺が生まれてから同じく五年後に姿を消しやがった」
「消しやがった」。口ではそう言うのに、その表情は、穏やかで優しい。それが、シエルを見ていたあの視線と重なって、もやりとしたものがまた胸に疼き始める。
「……俺は親父を見つけ出したい、だからこうやって情報を集めていたんだが。まさか義弟に会うことになるとはな。この際だ、丁度いい。情報提供の礼といっては何だが、このカジノの後ろ盾になってやる。金のことなら俺に任せろ、大奥……、俺の母親が腐るほど持ってる」
それは本当に今回の件の礼のつもりか?
「一年に一度。ここを視察に来るから、客入りが悪くならないように頑張ってくれ」
シエルに会いたいがために、お前はそれを俺に提示したんじゃないのか?資金援助はいい、だがそう簡単にうちのディーラーを。いや、シエルをこんな男に渡してたまるか。
……嗚呼、そういうことか。俺の心底にもどかしく絡みついた、黒い感情。
「そうだ、お前に日本名をやろう。兄弟なんだから、日本に来ることもあるだろうしな」
男は目を細めて、俺のデスクからボールペンとメモ帳を一枚取ると、さらさらと達筆な字で「柊 輝」と書いた。
「お前の日本名は、柊 輝だ」
今、はっきりと分かった。この感情を、やっと言葉に言い表すことができそうだ。
この際、はっきりと言おう。

俺はこの兄貴が嫌いだ。

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作者名:空弥 | 作成日時:2018年11月3日 20時

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