酔狂な賭け事牡丹【男主】 (ページ2)

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第二話ページ2

会計は椿さんに持ってもらった。

「男だから」って俺が払おうとしたんだけど、「Aくんに払わせたら私が怒られちゃうから」って彼女が言うから、その言葉に甘えさせてもらった。

がちゃり、家の扉を開ける。

そこで視線を上にあげると、白のＴシャツに黒のスキニー。

腕組みをして目を閉じ、壁に寄りかかっている葵さんがいた。

『……ただいま？』

「嗚呼、おかえり」

靴を脱ぎ、玄関に上がる。

彼の顔を覗き込むと、葵さんはぱち、と目を開けた。

その目元が、ちょぴり緩む。

『……まさか帰り待ってた？

結構長い時間だよね？』

「待ってない」

『いやでも』

「たまたま、ここで居眠りしてただけだ」

この人がそんなとこで居眠りなんてするわけない。

今日は休みらしい葵さんに、俺は昼頃帰ってくるとしか連絡していないし。

そもそも今時計の針は、午後三時を指している。

でも葵さん、変なところ頑固だから。

『嗚呼うん、でもお迎えありがと』

「ん」

する、と葵さんが俺の頬に触れる。

女の人みたいにすべすべじゃないし、剃ってはいるけど髭だって少しはあるのに、「綺麗な肌してるよな」って彼はそこを包み込むようにして撫でる。

大きな指からじんわりと熱を感じて、その気持ちよさに溶けてしまいそうになる。

きゅ、と思わず目を閉じると、その瞼にキスされた。

――愛情を人一倍欲しがってるし、逆に与えてやりたいとも思ってる

ふと、椿さんの言葉を思い出す。

目を開けると、葵さんは優し気な表情をしている。

甘い言葉も柔らかい表情も、全部俺だけに向けられたものって考えるだけで、きゅうんと切なく胸が疼く。

深い深い彼の独占欲も、今ではぬるま湯に浸かっているみたいで心地よい。

寧ろ、俺が彼を縛っているのかと思うくらいには、葵さんに溺れてしまっている。

「好きだぞ」って変わらぬ愛を伝えてくる男の首に、ぎゅうと抱き付いた。

『言われなくても分かってるよ』