第二幕 ページ3
「何処だ……？」
山の中腹付近に降りたって、翼を畳んだ。
人間にできるだけ出くわさぬ様、獣道を歩き出す。
着物に擦れるたび草木はさわさわと揺れ、その葉から露を溢した。
暫く歩くと、開けた場所があった。
この時期は様々な種類の花が咲き誇り、美しく幻想的な世界を創り上げている。
人間も好んでこの道を歩いてこようとはしないから、花々は大きくなるばかりだ。
「この辺りか……？」
花を掻き分けながら先を進む。
額の脂汗を、手の甲で拭った。
「傷ついていると聞いたからな、早く探さないと……」
そう、声を発した時だった。
「……っぐ」
微かに、呻く声がした。
ぴくん、と耳が反応し、掴んだ花を、ぐい、と後方に押しやる。
前へ前へと進んでいったとき、その姿が見えた。
「……酷いな」
思わず、そう呟いた。
妖に生まれ変わって時期はそう間もないだろう。
小さな体躯には、擦り傷や切り傷、打ち身、それから打撲。
見て分かる範囲でこれだけの損傷なら、骨が折れていてもおかしくはない。
垂れさがった煤けた黒い尾を忌々し気に睨みつけてから、俺は彼に手を翳した。
烏天狗が持つ、「神通力」という力である。
緑色の優しい光が彼を包み込み、傷を治癒していく。
数分してその光が色をなくすと、俺は細く息を吐き出した。
「これでいいだろ」
「……ん、う」
俺の声で起こしてしまったのだろうか。
しゅるん、と尾がしなやかに動いて、意識的なのか無意識なのか、俺の腕に絡むように触れた。
長い睫毛がゆっくりと開いていく。
一瞬、強い風が吹いて、花々はその花弁を空に舞わせる。
猫又が目を覚ました時、俺は彼を「綺麗だ」と思った。
続く
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腐死蝶 - 酔興の賭け事のパスワードを教えてください！お願いします (2019年1月20日 9時) (
レス) id: 55fb495860 (このIDを非表示/違反報告)
雷雅 - 更新頑張ってください！ (2018年10月4日 21時) (レス) id: e8ca574508 (このIDを非表示/違反報告)
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