妖交じりて、愛を繕う【小説】 (ページ4)

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二章　覚知綾　(蟒蛇。) ページ4

「最近妖童が出る…って聞いたんだけど」

白群に染められた袖を強く振りながら、誰に言うでもなく覚は呟く
僕＿＿覚知綾はとある社の前で立ち止まった

「ここだと思うんだけど…」

その社には結界のようなものが張ってあり、その中に“妖童”と呼ばれているであろう者たちが姿をちらほらと見せている

「初めまして、怜疾と言います。社に何か御用で？」

ずっと立ち竦んでいると、社から一人の男がこちらに気が付いて社の階段を二つ、三つ降りて話しかけてきた

「おやまぁ、御丁寧にどうも。でも、ちょっと興味が湧いて来ただけなんだ～」

人に蔑みを受けた半分人間の妖は、大半の者が人間不信に陥るらしい
それは、彼も例外ではない様だ

でも、彼は心の中では善人ぶっていることをちゃんと分かっているし、人間不信の自覚もある

「一応自己紹介をしておくね～僕は覚知綾。純の妖だよ
それと、善人ぶってなくていいし、人間不信にならなくてもいい
別に危害は加えないから」

長年、ずっと友達が出来ていなかった為か、どうも人を煽るような態度を取ってしまう
これが僕の当分克服できないであろう課題だ

「長居しちゃって申し訳ないね、今日の所は帰るとするよ」

当たり前だが、歩けば歩くほど、社から離れていく

帰り道、雨がポツポツと振ってきて、次第に強くなっていく
髪、顔、袖、裾へ雨は僕へ強く当たって来る

頬に伝わるこれは、雨か、それとも涙なのか
こんなの、なんだか僕らしくないものだ

雨の中急いで僕の前を横切る人間の心はとても汚い

だが、何処かそれでも他の人間と接せられるような人間に、いつか憧れを抱いた
叶うはずもないのは分かっている事だが…

「嗚呼、天神様天神様」

「いつか我も人に成りあがれるや?」