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6 「ガーベラの花言葉」 ページ7

二人の共有スペースへ行くと、テーブルの上には既に美味しそうな朝ご飯が。

ハムエッグとサラダ、トーストにコーヒー。

綺麗に盛られたカットフルーツは、滴がきらきらと光っていた。


『……女子力』

「そうでもないですよ。

僕、元々はバイトとして入ってて。

給与が少ないから自炊してたら、正規雇用になった今でも作るようになっただけで」

『いやいやいや』


そうは謙遜しているが、私にとってこの朝食は豪華以外の何ものでもない。


「ほら、温かいうちに食べちゃいましょ」


渡井くんに促されて席に着くと、目の前の真っ赤な花に目が行った。


『……これ』

「嗚呼、昨日お買い上げいただいたガーベラですね。

雨野さんが来た時には元気なかったんですけど、水に生ければ多少は回復しますから」

『そうなの?』

「定期的に水は変えなきゃいけないみたいですけど」


コーヒーを一口飲んだ彼は、息を吐いてこう続けた。


「でも、ぴったりですよね」

『何が?』

「ガーベラの花言葉です」


するり、彼の細くて男っぽい指先がガーベラの花弁をなぞる。


「ガーベラの花言葉は【踏み出せ】」


ごくり、と自分の喉が鳴る。


「好きな人に裏切られて、今が一番辛い時かもしれません。

でも、引きずって生きるのはもっとつらいです。

だから、苦しいことはゆっくりでいいので忘れて、新しい恋をするのも手ではないでしょうか。

……一番の理由は、僕が貴方には笑っていて欲しいからなんですけど」


思わず、視界が歪んだ。

ボロボロ涙を溢す私を見て、渡井くんが慌てる。


『ごめん……、何もしなくていいから傍に居て……っ』

「……はい」


私と彼はただの同居人だ。

でもこの時ばかりは、彼の存在が世界の誰より誰より大事で手放したくはなかった。

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ニコちゃんマーク - めっちゃ面白いです!最新待ってます!文字ってどうやったらこんなのにできるんですか? (2019年7月30日 8時) (レス) id: c2a6a5489d (このIDを非表示/違反報告)
かなと - なまむぎ。さん» この作品大好きです!更新待ってます!! (2019年7月30日 6時) (レス) id: b9832c7634 (このIDを非表示/違反報告)
リリィドール*ガチめに低浮上(プロフ) - 更新が停止となっていて、すごく衝撃を受けていた者です笑。また更新が再開されるとのことで、すごく嬉しいです!作者さんのペースで無理しない程度に頑張ってください!応援してます♪ (2019年7月15日 0時) (レス) id: e60ca59755 (このIDを非表示/違反報告)
なまむぎ。 - このお話とても大好きです!更新頑張って下さい! (2019年4月22日 20時) (レス) id: 51d094ad46 (このIDを非表示/違反報告)
Dream★World(プロフ) - この作品好きなので、移転先教えてください……!!! (2019年2月3日 18時) (レス) id: 093bdce514 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:空弥 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年7月29日 0時

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