保健室での課外授業【男主】【名前変換オリジナル】

第五話 ページ6

「先生！」

「保健室で騒ぐな」


じとり、東野を睨んだけれど、あいつは満面の笑みで保健室の中に入ってきた。

いつも「用事のないときは来るな」と言うのだが、「じゃあ先生は俺に怪我してほしいのか？」と。

生徒の怪我をよし、とする教師なんているわけがない。

む、として黙り込んでいたら、得意げな顔で「だろ？」と言われてしまった。

それからこいつがここに来ることに関しては、「黙認」といった形になるのだが。


「先生！」

「はいはい。

あーもうくっ付くな！」


こうやって目を離せば腰に手をまわして抱き付いてくる。

俺がそれを無理やり引き剥がそうとすると、ぱ、と笑顔ををこちらに向けられる。


「定期的にアプローチしないとな。

先生が他の奴に靡かないように」

「別に東野のものになったわけでも無いでしょ」

「だけど、先生が告白されたときに、一瞬でも俺の顔がちらつくことに意味があるんだよ」


どういうことだよ、と思う。

東野は、俺の白衣にぐりぐりと額を押し付けた。

まるで飼い主についてまわる犬みたいだ、なんて妄想してしまって、「ふは」と笑ってしまった。


「……先生」


ちょっぴり、低い声。

それを聞いて笑うのをやめると、急に視線が刺さった気がした。

いつからこっちを見ていたんだろう。

何処か真剣なまなざしで、俺を見ている。


「今、笑ったよな」

「……そうだけど、何。

俺が笑っちゃ悪いの」

「いや」


ひた、と彼の角ばった手が頬に触れる。

じんわりと、熱を帯びる。


「……すっげぇ、かわい」

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