32、瞳 ページ32
本当に、それだけなのに何だか無性に泣きそうになって私は自分の手を強く握った。
泣かない。私は絶対泣かないから。
そうあの日以来自分に誓った事を思い出して私は声を殺していた。
『ありがと…クロ。私大丈夫だから』
心配してくれているクロに顔を上げてそう言えば、いきなりクロが下にしゃがんで私を目の前で見てきた。
何だかそれに緊張してしまい固まる私。
彼の赤い瞳が真っ直ぐに私を見て…そこで私は気づいた。
…そうだ、この真っ直ぐな瞳、真昼そっくりなんだ。
この人も"私"という人間を認めてくれてる。
そう思って私は少しヘラっと笑ってみせた。
『どうしたの？クロ』
「…いや、泣いてるかと思ったけど違ったか」
『………』
…バレてた？
いつもだるそうなめんどくさがりなのに、こんな時にそう言われ私は内心冷や汗が出まくっていた。
でも、私は平常を保って今度はクロの髪を撫でてやったのだ。
…泣きそうだった事を、バレないように。
『ほらほら、私が泣くわけないでしょー』
「うわっ…お前なぁ…」
なんか、ほんとにクロって優しい。
そう感じて私はスッと立ち上がった。
すると
「…雪、クロと仲良いな」
『………』
ずっと黙っていた真昼が突然拗ねた表情でこう言い出した。
あぁもう可愛いんだから。
そんな事を思った私は、真昼の頭もトントンと撫でて笑った。
『そりゃ、猫だから！』
「…今は猫じゃねぇよ」
彼の頭を撫でながらそう言うとすぐにクロの訂正が入って私は笑顔に戻った真昼を見た。
それから、庭の窓を見る。
視線の正体が分かった。
小さな子供達だ。本当に幼い子達がたくさんこっちを見ている。
『…子供？多いな…リリイの子とか……はは、笑えない…』
「いえいえ雪さん何を言いますか、私の事どんな目で見てたんですか」
『ゎぁあ！』
視線の正体が分かり、独り言のように呟いていたら突然私の肩に手がおかれて思わず大きな声を出してしまった。
リリイではないか。
…普通に追い付かれてしまったようだ。
そう項垂れながらも、リリイはそんな私に笑いながら話し出した。
「いやぁ雪さん人気者ですねぇ」
『……』
「あれ雪さん酷いですねぇ私の事そんな敵視しないで下さいよ〜」
ニコニコしながら無言の私にこう言ったリリイに少しイラッとしていると、向こうから息を切らした御園がやって来たのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 382人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
怜衣(プロフ) - 連投失礼いたします。17話まででべルキアが椿のことを「椿」と言っていることが気になりました。以降は直されているみたいなので、ご報告だけしておきました！ (2017年4月26日 18時) (
レス) id: f61c514b96 (このIDを非表示/違反報告)
怜衣(プロフ) - 初めまして！読ませてもらっているのですが、少し気になることがありまして...。べルキアの椿の呼び方は、つばきゅんではないでしょうか？ (2017年4月26日 18時) (レス) id: f61c514b96 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - ユイさん» ユイさんへ♪お返事遅れてすいません！いつも見てくださりありがとうございます！頑張ります！ (2016年9月6日 21時) (レス) id: b0ed99a4e9 (このIDを非表示/違反報告)
ユイ - いつも見てます。これからも頑張ってください!! (2016年9月4日 14時) (レス) id: 20080c7ffa (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - 主夫LOVEさん» 主夫LOVEさんへ♪ほんとですか！嬉しいですありがとうございます！ (2016年9月4日 0時) (レス) id: b0ed99a4e9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雪 | 作成日時：2016年8月18日 22時
