三ツ谷推しによる三ツ谷推しのための三ツ谷短編集３ (ページ6)

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先輩の腕の中でほっと一息吐く。

しかし、駅につき扉が開いた瞬間、男が走り出した。

逃げるつもりだ。

「逃げっ…！先輩！」

私は慌てて先輩の手を引っ張った。

けど、先輩は追いかけなかった。

そっと私の手を引きながら、駅の外に停まってあったタクシーに乗る。

運転手に私の家の住所を告げ、私を抱きしめた。

「三ツ谷先輩…？」

「後は警察がどうにかするだろ。今はお前の方が心配」

先輩の優しさに抑えていた涙が溢れる。

「先輩っ…私、、怖くて言えなくてっ……」

「あぁ、大丈夫。今日はもう帰ろうな」

家へ着くと、先輩は私の部屋まで送ってくれた。

心底申し訳ないと思う。

久しぶりのデートでこんなことにかなってしまって。

まだ震える手を握りしめながら、入り口で突っ立っていると、先輩は私のベッドに腰掛け手招きする。

そっと近付くと、先輩は優しく腰に手を回すと、ぐいっと引っ張った。

仰向けの先輩の上へうつ伏せに寝るような形になってしまい、高い密着度に頬が火照る。

「ごめんなA。すぐに気付いてやれなくて」

「せんぱい……」

申し訳なさそうに眉を寄せる先輩に、思わず私はキスを落とす。

「そんなことないです。三ツ谷先輩は助けてくれましたし。それより私のせいでせっかくのデートが……」

「Aのせいじゃないだろ？確実にあいつが悪ぃんだから………くそっ腹立つな」

苛立ちを隠せない三ツ谷先輩は、そっと私の頭に手を当て、ぎゅうっと、くっついてしまうのではと思う程抱きしめた。

苦しそうな声が響く。

「守れなかった俺にも腹が立つ」

「……私は守ってもらいました。この先輩のハグで全部忘れます！」

「A……」

お互いに目を合わせ、口付ける。

先輩がいるだけで、こんなにも安心する。