君想う夢・君恋し花 …５

愛を生む人 … ５２ ページ7

「おーい、ガヤ！」
「コラっ二階堂っっ！！なんだその言葉遣いは、太輔様だろう！！」
「はい、すんませーん」
「お前はもう、いつまで経ってもホントに…」

家向きの事をしてくれる執事の皆川さんに怒られて、頭を掻いてるのは二階堂高嗣だ

そう、櫻華楼で宏光に着いていた禿だ、身請けの日、宏光への母親の形見の簪を託し君想橋での待ち合わせを頼んだヤツ…

今はウチで、料理人の見習いをしていた


出会いはホントに偶然で…

あのパーティで、宏光が山下智久の子を身篭ってると聞いた翌日、オレは何処にも持って行き場のない想いを抱え、一人で君想橋に行った

久しぶりの七星通り…

街の賑わいは前と変わってない、それでも太夫でいた頃とは、やはり街そのものを見る自分の目が、少し変わっているように思えた

大嫌いだったこの街は、今はオレの原点の様な気がした…


「、…太輔？おまえ、太輔じゃねえの？」
聞きなれた声に振り返ると、ソコにいたのは桃幻楼の遣手だった《横尾渉》だった

「渉っ！？おま、マジで渉かよ！！」
「おおやっぱ太輔か！！どうしたんだよこんなトコで、お前まさか御曹司クビになって、花通りに舞い戻って来たんじゃねぇよな？」

恐ろしい想像して、ケラケラ笑ってやがる

「馬鹿言え！なワケねぇだろ、…ちょっと懐かしくてさ…」
「懐かしい…？へぇ、ココがねぇ、…どした、実家で何かあったのか？」
「いや、そうじゃないよ…別に……って、アレお前…っ！？」

渉の後ろで荷物持ちしてる男を見て、オレは唖然となった

「おま、宏光んトコにいた禿じゃん！なんで渉と！？」
「なんだ知り合いか？コイツさ、ウチで働かせてくれって来たんだけど、流石にこの風貌だとマダム相手はムリってオーナーに却下されて、取り敢えず今ウチで下働きさせてんだよ、…あ、そだ、お前さコイツ要らない？」




「ガヤ出来たよ、ほいオムライスー！！」
「サンキュー、…美味っ！腕上げたなニカ」
「まぁコレだけはね、拾ってくれたご主人様の大好物だから！あとコーヒー、ミルクとシュガーは多めだよ！」
「ありがと」

渡されたコーヒーは、ドンピシャのオレの好み
数学の公式を駆使したアタマには、これくらいの糖分が丁度いい

一口二口飲んで、マグカップをテーブルに置いた

傍に立ってるニカが、壁に掛けてるカレンダーをじっと見ていた


「どした？」
「ん？…どうしてるかなって思ってさ…ミツ…」



「そだな…、ちゃんと笑っててくれたら、それでいい…」

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