愛を彷徨う人 … 10 ページ25
「罪人は、オレ一人だ…」
トモはそう言うと、オレの胸元にある小箱にそっと手で触れた
「…申し訳なかった……、この子にも、お前にも…」
トモの目から、キレイな涙が流れ落ちる…
その涙には、一つの嘘も無かった
だとしたらオレが返せる言葉は、何があるんだろう?
トモの想いに、同じだけの気持ちで…
芽生えて、そして蕾のまま眠ってるこの子に…
「蓋、開けてもいい…?」
「宏光…」
「会いたいんだ、トモと育んだ命に…」
「…会いたいと、思ってくれるのか?この子に…」
驚いた表情でトモが聞いてくる、その問い掛けに、オレは頷いた
そしてソライロの蓋を開け、初めて《小さな我が子》と対面した
真っ白な花に包まれ、ガラスのケースの中で眠ってる命…、この子があの日、生まれた子…
オレの中で、ホンの僅かな時間だったけど存在してくれていたんだ
「…可愛い…」
滲む視界…思わず漏らした言葉に、トモが微笑んだ、そして、オレと子どもを両腕で抱き締めてくれた
「ありがとう…その子を忌み嫌わないでいてくれて…」
上擦った震える声…トモの心が、オレの中に流れ込んでくる…
例えオレ達が兄弟だとしても、授かった命になんの罪があるだろう
「例え一瞬でも、この子が存在してくれた時間は幸せだった…、生まれてきてくれて、ありがとう…」
今だけは、オレとトモはこの小さな命が愛おしいと、ひたすらに想った
「この子は、この寺で次の転生まで眠ってて貰う、…それでいいか?」
「うん…、また、会いに来てもいい?」
「いいよ、」
そして、オレ達は住職さんに会いに本堂に行った
正面にある大きな仏像は、どんな魂も分け隔てなく優しく包み込む、静かな眼差しをしていた、この子の未来へ進む道を、いつまでも穏やかに見守ってくれる、
そう、思えた…
「では、お子様を大切に お預かりいたします」
「ありがとう住職、宜しく御願いします」
水色の箱を託し、オレとトモは寺を後にした
帰り道…トモは、一言も言葉を発すること無く車を走らせていた
兄弟…、一度知ってしまった事実は、どんな事があっても無かったことには出来ない、ならこの先…オレはトモとどう関わりながら生きていけばいいんだろう
ふと見た横顔は、とてもキレイな線を描いていた
「宏光…」
「え?」
「次はお前だ…、未来を繋げ…」
「トモ…?」
そして…その言葉の意味を、車の行先が教えてくれた
「君想橋…、……っえ!?」
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GAYASAKURA(プロフ) - まいまいさん» 思います、数ある書き手様の中から見つけて下さり本当にありがとうございます!ご縁を頂けて嬉しいです! (2020年8月5日 21時) (レス) id: a6c9395ed2 (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - まいまいさん» こんばんは!連コメありがとうございます!長々と引き伸ばしておりますが、少しでも楽しんで頂けてたら何よりです!えち展開もありますが、サラッと流して頂ければと思います、《I wish》や《雪華》も似たような展開なので、またお時間ある時にお越しいただければと (2020年8月5日 21時) (レス) id: a6c9395ed2 (このIDを非表示/違反報告)
まいまい(プロフ) - 皆川が怪しくて気になりますが、ついに2人が一緒に暮らせるようになったので大満足です!!そしてニカも。2人が結ばれるところを早く読みたい〜HEATの宏光と太輔が楽しみすぎます!! (2020年8月5日 20時) (レス) id: d8ffbdef31 (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - pochiさん» また読み手様の失笑を買いそうです笑笑、ある程度纏まったら触りだけアップしたいと思います!コメ大感謝です! (2019年6月11日 19時) (レス) id: 3b1ef006c1 (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - pochiさん» 移行になりました!6章ほ100作目になるので、ココで家族にしてあげたいんですが、どうかなぁと言うところです、ホントに書きたいのは、家族になってからなんですけどねー笑、引っ張りすぎたなぁと反省しております、次作も考えておりますが、これも長編になりそうで (2019年6月11日 19時) (レス) id: 3b1ef006c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:GAYASAKURA | 作成日時:2019年5月5日 2時