《藤＋北》が、くっ付いた？ … ３ 表参道HUG編

SWEET・PEPPER …１４ ページ17

「倒れそうになっても…か…」

ドラマ撮影の為のスーツを着て、出番を待っていた、台本はトコトン読み込んでいてセリフも完璧に覚えている、でも今回の役はそれだけで成り立つような生易しいもんじゃない

全くの真逆のキャラクター、しかも双子…
同じ顔、同じ声…同じ背格好、けど運命は真反対の位置にいる二人

それをどう演じ分けるか…
今までも様々な役を頂いてきたけど、今回に限っては、今までの経験は何一つ役に立たないことを思い知らされた

頭の中沸騰する程没頭して、気がついたら外が明るくなってることも多かった

ライブ準備とドラマ、そしてテレビや雑誌の収録


座長として責任を担う立場にもある


充足感と重圧感…この2つのパワーバランスがオレの日々の課題だった


無意識に溜息を漏らしたとき、ポーンて背中を叩かれた

「よぉ疲れてんな、座長」
「あ、お疲れ様です、いえいえそんな事は…」

共演のベテラン俳優さん、気さくで話しやすく、人間的な魅力溢れる方だ、

演者としてはまだ経験値の低いオレや、ほかの俳優さんにも、ベテランだからこそのアドバイスをして下さっていた

今回の作品でお会い出来たこと、本当に有難いと思う

「撮影、いい感じで進んでるな」
「ええ、学ぶことが多い現場に関われて感謝しています」
「そうか、そう思ってくれてるなら何よりだ、作品はチームワークの良さが出来を左右する、君ならもう分かってるか…、いい仲間を持ってる様だしな」

笑うと少年みたいな顔になるんだよな
人柄の良さが現れてるって言うか…

「そうですね、多分家族よりも長く、オレの近くにいてくれる、大切な仲間です」
「うん、わかるよ…、君を見てればね」
「嬉しいです、あ、良かったら今度のライブ見に来てください」
「そうか？それはぜひとも行きたいなぁ、前にドラマで一緒になった子もいるしなぁ、あの子も面白い子だったな、オレの知らないディープな世界を教えて貰ったよ」

楽しそうに笑いながらそう言うと、呼びに来たスタッフさんと一緒に現場に戻って行った


「藤ヶ谷さん、次のシーン少し変更ありましたから…」ともう一人のスタッフさんが台本を持って来る

これもよくある風景…


臨機応変…ライブでもハプニングは付き物だ

去年は特効の残煙に噎せてしまって、アカペラの歌い出し、北山が即座に対応してくれた


《大丈夫だ、オレがいる》
薄暗い会場内、アイツの瞳は強い光を放っていた


あの瞳が、オレを捉えて離さないんだ…

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