君想う夢・君恋し花

愛を売る人 … ４５ ページ46

「やっぱり花魁だ！どうしたの、今日はお祭り見物？」

たこ焼き買うのに並んでると、向かい側から一人で歩いてきた浴衣を着た大人なキレイな人が、オレの隣で不意に立ち止まり、声を掛けてきた

一瞬誰だか分かんなくて顔見るとユリアさんだった

「あ…」って声出そうとした時、オレよりも早くトモが声を上げた

「姉さんっ！？」「あら智久っ！？」
「え、姉さん？？？」

三人同時に驚きの声が出て、周りの人の目が一斉にオレ達に向いた気がした

「姉さん…って…え？」
「いや、コノ人オレの姉貴…ユリア…」
「えーなになに？智久アンタ花魁と知りあいなの？ヤダいつから？」

驚きのよりも楽しみが勝ってる表情のユリアさんに対して、何ともシブーイ顔したトモ、オレはどう答えていいか分からず二人の顔を交互に見た

「…いいだろ、いつからでも、それよりなんでこんなトコ…姉さん人混み嫌いじゃなかったの？」
「昔はねー、家族連れとか見んのつまんないじゃない笑、せっかく新しい浴衣作ったから祭りくらい行ってみようかと思って！」
「一人で？ソレ虚し過ぎない？」
「失礼ね、連れならちゃんといます！…あ、来た！太輔コッチよ！」


姉弟らしいリズム感の会話を聞いてると、向こうから白シャツにデニムの男が両手にかき氷らしきものを持ってコッチに向かってきた

その顔に、オレはハッと息を呑んだ

「おいユリア、勘弁してくれよ、人にモノ買いに行かせていなくなるとか、マジ有り得ねぇだろ！」
「だってアンタ帰ってくんの遅いんだもん」
「はあ？わざと行列のトコ行かせたくせに…タチ悪っ！…って…」

その人がオレを見て、目を見開いた、その瞬間、トモがオレの肩をギュッと抱き寄せた、まるで二人に見せ付けるように…

「その人が姉さんのツレ？」
「そうよ、藤ヶ谷太輔っていうの」
「どうも…、ユリアの知り合い？」

ふじがやたいすけ…、名前を知ったことになぜかホッとした

「背の高いのが弟の山下智久、この子は…そう言えば名前知らないわね…いつも花魁て呼んでたから」
確かにそうだ…、サロンの予約は櫻花楼としか入れないから…

「あの…オレは…」
言いかけた言葉は、トモが被せてきた一言でさえぎられた

「北山宏光だよ、オレの恋人だ」
「…ットモっ！？」

衝撃に思わずトモの顔を振り返ると、トモの視線はオレでもユリアさんでもなく、なぜか藤ヶ谷太輔に向けられていた

「恋人…ってアナタ…」

ユリアさんが怪訝な表情でオレを見つめた

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