君想う夢・君恋し花

愛を売る人 … ３８ ページ39

そしてオレはそのオトコを部屋に入れた

「ミツ、何かあっても困るから、オレここに居るね！」
障子の向こうでニカが見張りを兼ねていてくれる、一先ずジャマは入りそうにない

「ありがとな、いつもゴメン…」
「いいよ、オレ花魁付きの禿だから！話早く聞かないとオーナー戻ってくるよ」
「そだな」

障子を閉めて、オレは居心地悪そうにモゾモゾしてるオトコに向き直った

「あの…オレ、お金そんなに持ってないんですけど…」

何度も瞬きを繰り返しオドオドしながらそう伝えてくる、柔和な目元に顔の真ん中に存在感バツグンの鼻が付いてる…優しさだけを醸し出してると言うのがピッタリのオトコだった

「いいよ、金なら別に…アンタ名前は？」
「宮田…宮田俊哉と言います…」

躊躇いがちに名乗ってくる、その名前にオレは覚えがあった

「トシヤ…、トシ…」
「あ、はい…」

絶対、そうだ…、確信に似た思いでオレはまた宮田俊哉に尋ねた

「ユウタって人、探しに来たのか？」
「知ってるんですか？ユウタ…玉森裕太って言うんです！幼馴染で…オレ修行で故郷を離れてて、やっと一人前の楽器職人になって帰ってきたら、アイツ…家出して行方不明って親父さんに言われて…」

「行方不明…」

大方そんなトコだろう…、裕太はベータだ、普通ならこんな世界に身を墜す子じゃない、先妻の子だと言うことで、継母に疎まれた挙句桜の花楼に売られた…、

《オレがいたら家族の仲が悪くなるから、これでいいんだ…》

寂しそうに微笑みながらユウは、そう言っていた

「オレ、ギター職人なんです、修行の為に長いこと家を出てて…独立したら裕太に迎えに行くからって約束してたんです、でも誰も裕太の行き先を知らなくて…、どうにかして知りたいと思って、店に裕太の写真飾ってたんです、そしたらギターの注文してくれた人が、裕太に似た人を見たって…、花街…夢通りで働いてるって聞いて…、片っ端からこの通りの店で写真見せたら、ずっと前に櫻花楼にいた人かもって…」

そして、宮田は白いフレームに入れた写真をオレに見せてきた

長い間会わなかったのを裏付けるような、かなり前の写真…オレの知らない、まだ幼さの残る《ユウ》がソコにいた

「裕太、ここに居ないんですか？教えてくださいっ！お願いしますっ！！」

畳に額を擦り付けるようにユウの行方を聞いてくる宮田俊哉…、オレは何をどう答えればいいのか…迷路をさ迷うような思いがした


「会わせてやるよ…《裕太》に…」

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