君想う夢・君恋し花

愛を売る人 … ３３ ページ34

「星祭り…ですか？」

「そうだ、その日を一日花魁に客を付けないで欲しいとな、ホントにあの人はお前にご執心の様だ、長年この商売をしているがここまで目を掛けて貰えた花魁も珍しい、お誘いをお受けすることにしたから、7月7日はそのつもりでいるように」

口角が緩みっぱなしのオーナー、トモにかなりの額を提示することはこの顔を見ていればわかる

「オーナー、その日はユウの命日です、どうかその日だけは、静かにユウを偲ばせてもらえませんか？」

亡くなった日も、ユウはたった一人…粗末な部屋に追いやられて、誰にも顧みられること無く逝ってしまった…、

オレは今もユウが不憫でならなかった

「ユウは自業自得だ、西国の大店のご主人へ身請けが決まっていたのに、嫌がって足抜けなんぞしようとしたからだ！」
「違いますっ！あれは足抜けじゃない！ユウは身請けの前に、一目だけその人の顔を見たくて…、オーナーがもっと早くソレを許していたらユウは…っっ！」

《命を落とすこともなかった…》

悔しさにオレは言葉を詰まらせ、ギュッと掌を固く握った


身請けの話…ユウは納得していた
家の負債を自分が身請けされることで完済できるならそれで構わない…と、寂しそうに…オレに言ったことがあった

だけどあの頃…ユウは一日だけ外に出して欲しいと、オーナーに縋りつくように頼んでいた

《お願いします、必ず帰ってきますから！ 》
《ダメだ！身請けが決まった娼花が廓の外に出ることは、慣例として許されない》
《一目だけ…それでいいんです！オーナーお願いします！》
《一目だけ…だと？そんな言い方をする様な相手なら、余計に会わせる事など出来るわけなかろう！》

そしてユウは、廓の奥座敷に身請けの日までほぼ軟禁状態になった、

ユウに会えるのはオーナーと身請けの旦那さんだけ、その頃のユウは食事すらほとんど取っていなかったようだった


そして、身請け前日…
外は、土砂降りの雨だった…

その日は《身請け祝い》の宴会が行われることになっていた、身支度で部屋に戻されたユウは、見張りの目を盗み、裏口から桜華楼を出ていった


ユウは、《その人》に会いに行ったんだと思う…、本当に一目顔を見たいと、その思いだけで出て行っただけ…



なのに、ユウが戻らなけれぱ莫大な違約金が発生することを恐れたオーナーが、捜索のために差し向けた追っ手が、ユウを追い詰めた

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