君想う夢・君恋し花

愛を売る人 … １３ ページ14

「ねー何楽しいことしてんの？」

突然聞こえてきた声に、オレは咄嗟にその方を向いた

いたのは黒いジャケットを羽織ったオトコ…
明るめの茶色の髪を風に遊ばせて、クイッと口角を上げてコッチを見ていた

「なんだお前、邪魔すんな！アッチ行ってろ！」

オレを抱き込んでるオトコが茶髪に凄んでみせるけど、茶髪は全く動じることなく、むしろ笑いながらコッチに歩いてきた

助けてくれるのか？…とそのオトコの顔を見たけど、茶髪の口から出たのは絶望的な言葉だった

「コイツΩでしょ、しかもこの香り…弄んでくださいって誘ってんじゃん、ね、オレも仲間に入れてよ、溜まってんだよねー」
「は？」

そしてオレの顎を掴むと無理やりに持ち上げ、切れ長の目をシュッと細めて小馬鹿にした様な表情を浮かべた

「お前さ、自分の性質理解しろよな、こんなヤバい香りさせて街ん中彷徨くんじゃねぇよ、バーカ」

そしてそのままソイツの唇が重なった

けど、…なんだろう…その瞬間、オレの中の何かが激しく反応した、こんな商売だ、数え切れないほどキスをされてきたけど、そんなことは初めてだった

「…っン…」

呼吸すらさせない激しいキスに、周りのオトコ達が呆気に取られたように目を丸くしていた

そして、オレを抱き竦めていた手の力が緩んだ瞬間、オレは反対側に突き出された


「行けっ！」
茶髪の声がして、そしてオレを庇うように前に立ちはだかった

「えっ！？」
「早く行けっ！逃げろって！！」
「テメェっっ！！」

茶髪の策略に気づいたのか、オトコ達がオレ目掛けて手を伸ばしてくる、茶髪がその手を掴んで道に突き飛ばし、そして二人目のオトコに足払いをかけ地面に投げつけた、一人目のオトコとぶつかり、二人とも動きが鈍くなった

「早く逃げろって！！」

マトモに向かってきた三人目の襟を掴み腹に膝蹴りを食らわせ、茶髪は狼狽えるオレの手を掴むと「オラ走れっ！」と強く引っ張った

そのまま二人で闇雲に道を走り抜けた
周りがその勢いに驚いて、道を開けてくれる

その中を茶髪と一緒に全速力で走った

「ハァ…ハァ…、も、お前さ、さっさと行けよっ！モタモタしやがって…ハァ…」
「ハァハァ…だ、だって助けて…ハァ…くれるとか思わなくて…」

「…仕方ねぇだろ、あんな縋るような顔されたら」

呆れたような声が荒い息遣いの合間に聞こえてくる

「…あの、ありがとう…助けてくれて…」そう言うと、茶髪の親指が拭うように唇に触れた


「イキナリゴメンな…」

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