Ｉ wish to be your only one …エピ１

佳き日のその後…１６ ページ16

「藤ヶ谷さま、お帰りなさいませ」

フロントで松田さんが、出迎えてくれる…それだけでなんかホッとするオレ…和むんだよな…松田さんの笑顔って…

「今朝はすみませんでした、アイツのコト…いろいろ頼んでしまって…」
「いえいえ,北山さまと少しおしゃべりさせて頂いて、私も楽しかったです」
「ｸｽ…なんかオレの悪口でしょ？アイツにグチられました？」
「それは…守秘義務がございますので、どうぞご勘弁を…」

とっても楽しそうなカオの松田さん…オレも自然と笑顔になる…

「ﾊﾊ…ではそういうことにしておきましょう…アイツ、部屋ですか？」
「はい、お出掛けにはなられておりません」

ずっと部屋にいるのか…悪いことしたな…ケータイで連絡先入れたら良かったな…
たぶん、帰らないオレを心配してるんだろう…

「藤ヶ谷様…？」
「あ、わかりました…ありがとうございます」
「お夕食はどうされますか？」

そうか…今日最後の夜か…

「今日はレストランにしてみようかと思います…」
「そうですか、ではお時間の指定がありましたら、フロントまで…」
「ありがとう」

カードキーをもらって、エレベーターで上がる…なんか早かったな…色んなコトあったけど、もう明日の夜は日本を離れるんだな…宏光…またしばらくは別々か…

「宏光…ただいま………ん？」

返事がない…リビング…いねーな……ベッドルームか……あ、いた！…やっぱ寝てるし…ﾌﾌ

寝てる姿は朝と同じだけど、違うのは、ベッドの上に二冊のスケッチブックが置いてある…

「…なんだろ…」
手にとって、パラパラめくっていくと…

「あ…コレ……」

キレイなパステル画の…一冊は何パターンもある住宅の外観…もう一冊は、各部屋の内装がデザインされている…

「…仕事…してたのか？」

何枚かめくって、リビングの内装デザインを見ていたオレは、このスケッチブックがオレたちの家をデザインしているモノだとわかった…

リビングの暖炉の上…ペアのテディと、バスケットボールが描いてある…

「宏光…そか…」

しゃがんで、そっとその柔らかい髪を撫でると、まつ毛が微かに震えて…ゆっくりと大きな瞳が開いた…

「太輔……お帰り…」
「うん…ただいま、宏光…」

まだ寝ぼけてるそのカオに手を添え、オレはそっとキスをした…

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