I wish to be your only one … L.O.V.E

Precious Lover … ４９ ページ50

「最後の面会時間て、何時だっけ…」

渡された入院案内の書類を捲る…1ページ目にあるのは入院承諾書…ココにサインしといて、って言われてたんだっけ…

そのままページを捲っていくと探してた項目があった

最後の面会時間19時から21時か…

なら太輔、少しは休めるかな…とホッとする自分がいる、アメリカにいた間はかなり忙しかったんだろう、頬の辺りがシャープになったのは一目見て分かった

食べないと直ぐに太輔は、見た目に表れてくる

オレが傍についてないと、やっぱダメだよなぁ…なんて…ミョーな自惚れに似た笑みが浮かぶ


自分の体がこのままどうなっていくのか分からなくて不安だらけの時間の中、アメリカから帰って来てくれた太輔、少し痩せた顔を見た時には嬉しいより申し訳なさでいっぱいだった

また、オレのことで迷惑かけてしまう…


そして、新海先生から聞かされた話で、オレはもう…何が何だか分からなくなっていた

脳腫瘍…って、なんでオレが？
治すためには、言葉と記憶を失わなきゃいけない…なんて、そんなんアリかよ……っ

大切な想い出を、全て手離さなきゃいけない…
もう「太輔」って呼ぶことも「愛してる」て伝えることも…二度と出来なくなる……

大切に大切に繋いできたオレと太輔の時間、そしてその思いをカタチにする為に培ってきた建築という仕事…ソレを全部消去して、これからを生きていかなきゃならない…


そんなの、ムリだ……っ

そんなことが許されるなら、一体オレは何の為に生きればいいんだ…
何もかも忘れて…オレがオレであることも忘れて…太輔に貰った幸せな時間は、もうオレの中のどこにも残らない…


そんなんで、オレの生きてる意味…あんのかよ……


「……ｯｸ……クソ……っ、ふざけんなよっっ！！！」

湧き上がる憤りと絶望感に、オレは入院案内の書類を握り潰し、叩き付けるようにして床に投げ捨てた


止まらない涙…口元を手で抑え必死で嗚咽を堪える、それでも耐えきれなくなって枕に顔を埋めた

目の前に、太輔の顔が浮かんだ…

笑ってる太輔…優しくて暖かくて…いつもオレに幸せの意味を教えてくれる太輔…アイツはオレの光……

何も分からなくって…太輔のコトを忘れてしまうなら、もうオレの人生に光はないから


闇の中でしか生きられないなら…オレは……

左手のリングが目に入る


「愛してる…」


太輔…愛してる……


愛してる……






愛してるから……オレを許して……───

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