I wish to be your only one … L.O.V.E

Precious Lover … ４３ ページ44

病室に戻ると、宏光は予想通りベッドに入ると《おやすみ三秒》で眠ってしまった

眠る前に、じーってオレの顔見ながら
「太輔、アメリカ…戻んなくていいのか？」て聞いてきた

「戻らないよ」って答えると、「ふーん…」て言ったきり目を閉じ、眠りについた…
特別嬉しそうな顔も、困った様な顔もしない…
まるで感情そのものを、どこかに置き忘れたかのように見えた…

無理も無い…

脳腫瘍…手術……言語障害、記憶障害……

聞かされた事実は、オレですら全身が固まるような話だった、まともな感情で受け止めたなら、胸が張り裂けてしまうだろう

感情をシャットアウトすることで、宏光は何とか平常心を保てているんだと思う

眠ってる顔は、オレの宏光そのままで…愛おしさが溢れ出してくる、寝顔…初めて宏光への深い想いを確信したのも、この寝顔を見た時だった…


１２歳のあの日…

「太ちゃん…一緒に寝てもいい？」

公園で見も知らないヤツからの卑劣な暴力を受けた宏光を、オレの家に連れて帰った…怯える宏光をオレのベッドに入れて、一緒に眠った

きっと酷く殴られたんだろう…唇の端に付いたキズを見ながら、オレは宏光を守ってやれなかったコトを激しく悔いた

もう二度と、この人に辛い思いはさせない…

その為にだけに、生きてきた

離れ離れの日々も、同じ時間を刻むことが出来るようになってからも、オレの中にあるのはいつも《この人を守りたい》

ただ、それだけ…


あれから２０年以上が経った…
やっと…自分の力で宏光を幸せにしてやれると思えるようになれたのに…っ


どうして……こんな…


マリッジリングを嵌めた手に、そっと触れる…

どうかいつまでも2人の人生を繋げてほしいと願いを込めて、デザインした


１５歳のオレが、気持ち精一杯のプロポーズをした教会で、仲間達に見守られて式を挙げた

左手の薬指…このリングを嵌めた瞬間の宏光の眩しい程の笑顔、今もハッキリと覚えてる…


あの日も…あの日も……


どんなささやかな出来事も、その一つ一つがオレ達の大切な時間であり、抱きしめたいほどの想い出に変わっていった


《大切な人や想い出、その全部が無かったことになるんだろ！ 》


宏光の悲痛な叫びが、オレの胸を掻きむしるように響いてくる



どうしてやればいい…


この人の《これから》を守る為に
オレに出来るコトは何がある……？



深い眠りについている宏光を見つめながら、出ない答えを探し続ける






「太輔、入るよ…」

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