Precious Lover … ４１ ページ42
宏光の呟くような問いかけが、シンとした部屋に響く
新海医師は、表情を変えることなくその質問に答えた
「その可能性があります…としか言えないんです、脳という組織は、まだ解明されてないコトが多い、何も起こらないコトも考えられます」
膝の上に置いていた宏光の手が、履いていたスウェットに幾筋ものシワを作る、そのシワの一つ一つが宏光の心の痛みを表しているように思えた
「それって…手術しなければ、障害は出ないってコトですよね？」
「ひろっ！？」
何を言ってるのかオレには分からなかった
「お前、手術しないつもりなのか？！」
「そうですよね？、手術しなければオレは今のオレでいられるんですよね？」
「ひろっ！何言ってんだ！！」
オレの制止など全く耳に入らない様に、宏光は新海医師にそう問い続けた
「手術は受けない…ということですか？」
「手術すれば言葉も記憶も無くすんですよね…？、そんなのオレは…もうオレで無くなる…、そんなのはイヤです！！」
「ひろ…」
激しく拒絶の言葉を繰り返す宏光に、オレはどう声をかければいいのか戸惑うばかりだった
「北山さん！手術を受けなければ命の危険が伴います、腫瘍が今以上に広がれば、記憶や言語だけでは済まない、分かりますよね？」
「同じことです！今まで生きてきたオレの全てが無くなるんだろ？大切な思い出も、大切な人のコトも、何もかもが無かったことになる…そんなの…死んでるのと同じだろっ！！そんな手術、オレは受けないッっ！」
大きな瞳から堪えきれない感情が溢れ出していた…、張り裂けそうな心の痛みがオレにも伝わってくる
「いきなりこんな話を聞かされて動揺されるのもよく分かります、ですが、これはとても大事な事です…お二人でよく相談して結論を出してください…」
「はい、分かりました…」
項垂れたままの宏光の肩を抱き、オレは新海医師にそう答えた
「では、失礼します…」
そう言って、分厚いファイルを持ち部屋を出ていく新海医師の背中を見送りながら、オレはやりきれなさでいっぱいだった
「ひろ…病室に戻ろ…」
オレは放心したようにその場に佇む宏光を促すように声をかけ、車椅子の押手に手を添えた
「動かすよ…」
返事が無いまま、車椅子を押しかけると「太輔…」と細い声がした
「ん？どした？」
「…ゴメンな…」
「ひろ…？」
ポタリ…と手の上に涙が落ちた
「いっつも…心配かけて……お前の負担にしかなれなくて……ゴメン…っ」
Precious Lover … ４２→←Precious Lover … ４０
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 569人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
GAYASAKURA(プロフ) - seaぺこさん» 続き覗いてくださればと思います！泣かせてゴメンなさい！コメ大感謝ですー！ (2018年6月14日 23時) (
レス) id: 3b1ef006c1 (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - seaぺこさん» こんばんは！コメありがとうございます！再読ありがとうございます、少しずつですが過去エピを入れております、あのシーンかぁと思っていただければ嬉しいです！ザワザワ展開ホントにゴメンなさいー泣泣、二人の絆を感じて下さるようにup頑張りますので、宜しければ (2018年6月14日 23時) (レス) id: 3b1ef006c1 (このIDを非表示/違反報告)
seaぺこ(プロフ) - こんにちは、何度も失礼します…またもやシリーズ初回から読み返していました泣 これ以上の試練…もし限られた時間なら24時間付いて居たいのに…嫁の事は自分の事より大切で心配で仕方ないのに、気持ちを隠して安心を与えようと振る舞う太輔旦那に涙です(TT) (2018年6月14日 16時) (レス) id: 5a95b02aa0 (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - ふじみつさん» おります、覚えておられたら懐かしく思って頂けるのではないかと思います、なかなかのシリアス編となりそうですが、ラストは《藤北ぁぁぁ！ 》で終われたらいいなぁと考えております、宜しければ続き覗いてくださればと思います！コメ大感謝です！ (2018年6月13日 8時) (レス) id: 3b1ef006c1 (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - ふじみつさん» おはようございます！コメありがとうございます！はい、おそらく殆どの読み手様の予想がドンピシャだったのではないかと思いますｗここからかなりの辛展開となります、申し訳ございませんー！今回は《記憶》がキーワードなので、過去エピ遡りながらupしようかなと思って (2018年6月13日 8時) (レス) id: 3b1ef006c1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：GAYASAKURA
| 作成日時：2018年5月20日 20時
