I wish to be your only one … L.O.V.E

Precious Lover … ３４ ページ35

「こんなコトくらい、ではありません、ウチの病院の方針で治療内容は必ずご家族同席でお話しています、…しばらくゆっくり休んでください、頭痛…かなり酷かったんじゃないですか？点滴で痛みはかなり軽減されると思います、今は体を休めましょう」


しばらく…ゆっくり…

その言葉は、オレにひとつの現実を突きつけてくる

「…入院、ですか？」
「そうですね…」

あくまで静かな物言いが、まるでオレの胸を鷲掴むように入ってくる

「困ります！オレ仕事があるんです！こんなトコにずっといるわけに行かないんですっ！！」
「宏光！？」

抗うようにそう答えると、突然ドアが開き父さんが入ってきた

「父さん…」
「どうした、大きな声出して…」

今のオレの気持ちが分かるのは同じ仕事してる父さんしかいない、オレは起き上がり苛立ちや不安が混じり合う思いをぶつける様に声を上げた

「父さん、オレ入院なんかしてるヒマ無いんだ！わかるだろ？樫原さんの家、棟上げ終わったばっかなんだ！その他のクライアントさんが待ってる！通院でいいだろ！ウチに帰してよっ！ねぇこの先生にそう言ってよっ！！」

「宏光、樫原邸は岸が充分お前の代わりが出来る、その他のクライアントは私が担当する、お前は体を休めることだけ考えればいいんだ、さっき太輔くんと連絡がついた、彼も直に帰ってくる、だから落ち着きなさい」

両腕をキュッと握り、父さんが言い聞かせるように一つ一つ正してくる、深い想いが見える
《父親》の眼差しがオレを包んでいた

「太輔呼んだの？なんでっ！」
「太輔くんはお前の家族だ、チケットが取れ次第戻ると言っていた」
「なんでそんな勝手なことするんだよっ！」
「宏光っ！」

振りほどくように腕を動かしたオレの手を、誰かが制止をかけるように掴んだ、目の前にいたのは、揺るがない真摯な表情をした新海先生だった

「点滴が外れてしまいます、やめましょう」
「離せよっ！」

いつもの自分じゃないことは、分かっていた
でも…突然の変化に全てがついていけない
1つの不安が幾つもの不安を連れてくる…

「戸惑うのも分かります…ですが北山さん、あなたの仕事を代われる人は、必ずいます、ですがあなた自身の代わりは、どこにもいないんです、今は体を休めて下さい、元気になれば仕事は幾らでも出来るようになります」


元気になれば…

今のオレにはその言葉は単なる気休めにしか聞こえない、


「新海先生、オレは一体どこが悪いんですかっ！？」

Precious Lover … ３５→←Precious Lover … ３３

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す