I wish to be your only one … L.O.V.E

Precious Lover … １９ ページ20

「ああ、そうだ…私はこの１０年余り、お前のひたむきな努力を間近で見てきた、仕事への情熱、クライアントの想いに真摯に対応する姿勢、どれをとっても父親では無く、同じ建築家として大いに認めるに値する人材だと思っている」

「所長…」

そう言って、真向かいに座ってる所長が大きく頷いてくれた、穏やかな慈しむような笑顔が、言葉に以上の気持ちを伝えてくれる

一番認められたいと願っていた人からの言葉に、オレの胸は喜びでいっぱいになり「ありがとうございます」の一言しか言えなかった

「返事は今すぐでなくていい、太輔くんとも相談する必要もあるだろうから、だがその気があるなら岸と永瀬くんの指導をお前に頼みたいと考えている」

「二人を…オレに任せて頂けるんですか？」

所長は軽く頷き、話を続けた

「そうだ、岸はお前が育ててきたようなものだしな、これからもお前の良き右腕になってくれるだろう、永瀬くんはまだ若くてデザインも技術も荒削りだが、とてもいい感性をしているし伸び代は大きい、堂本くんがお前を指導したように二人の才能を伸ばしてやってほしい」

「とても有難いお話だと思いますが、新しい事務所の運営と後進の育成、私に二足の草鞋が務まるでしょうか…」

不安をそのまま所長に伝えると、所長は口元に静かな笑みを浮かべた

「もちろん悩むこともあるだろう、だがその経験は、北山宏光を人間的に大きく成長させると私は思っている、まあ…お前が若手の指導に向いているかどうかは、葉山くんの活躍を見れば答えは出ているだろう、葉山くんは自身の父親以上に、北山宏光氏をリスペクトしていると公言しているしね」

いたずらっぽい笑顔で所長が揶揄ってくる
建築デザインの雑誌に璃久の作品が掲載された時、インタビュー記事でそんなことが書いてあった

「あれはリップサービスですよ」
「そうかな、あの子は口下手で不器用だ、だからこそウソやお世辞は言えない子だよ、どんなクライアントにもいつも本音で向き合ういい建築家だ、葉山氏が璃久を変えてくれた人に感謝していると言っていた」

璃久の作品には、例えどんな斬新なデザインだとしても、どこかに一つ…心をゆったりと置ち着かせてくれる空間を生み出していた、それは父親の葉山氏が手掛けてきた作品と近似している

血の繋がりが、無意識に璃久を導いているように思えた


「そんな風に言って貰えて、ホントに有難いです、葉山璃久の人生の中で僅かでも役に立てたなら、何よりです」

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