LOVE CASTE … 恋哀階級 vol.２

CASTE … ５４ ページ7

そして、数日が経った…

トモ…と言うより相澤総合病院からの臨床開始の知らせはなく、櫻井部長はヤキモキが絶えないようでオレの顔を見ると、｢まだ連絡はないのか？｣と何度も同じコトを聞いてきた

｢相澤総合病院の入院患者は、社会的地位のある方ばかりです、何かあれば大ダメージ…向こうも念には念を入れて投薬できる方を選定してるんだと思いますが…｣

このやり取り…何回目だよ…はぁ…

｢それは分かってるんだけどな…木村専務からのツッコミが激しくてなぁ…あの新薬はウチの専売特許になる、会社の株価に影響するから経営陣も気が気じゃないらしい｣

何度も同じコト聞かれて、オレも少々ウンザリしてて、おまけに櫻井部長は気のおける上司なのもあって、つい本音を漏らしてしまった

｢投薬は、その人の命と人生を守るものでしょう、会社の利益の為に開発しているのはありません…開発チームの志しもその方向で一致しています、櫻井部長ならその事ご存知ですよね？｣

｢わかってるって！勿論オレだってそう思ってるよ…けどな、どうもMARS製薬が同類の新薬を開発しかかってるらしい…先に特許を取られたら今度はウチがダメージ食らうんだ、分かるだろ｣

｢MARS製薬が…ですか？｣

問い直すと、櫻井部長はチラと目配せをすると、オレを引っ張って会議室に連れていった、どうやら周りには聞かれたくない話らしい…

会議室に入ると、オレをパイプ椅子に座らせ隣を陣取った…ち、近いって！

｢…まだ不確定情報だけどな、どうやら向こうには天才的頭脳の化学者がいるらしい…名前も年齢も性別もわからずじまいなんだが…MARSの特許はその人物が全てに関わってるそうだ｣

｢へえ、謎めいてますね…｣
｢おおよ、だから余計経営陣はイラついてるんだって！、ウチの開発チームも選りすぐりの集団なんだけどなぁ…お、そういや開発チームに来期から千賀が入るらしいぞ｣

｢げっ！千賀っすか？｣

｢おう、アイツも薬学科卒だしな、本人は立ち上げばかりの化粧品部門でその道極めたいと人事部長に泣きついたらしいけどソッコー却下されたらしい、まあ城島部長じゃな、千賀も従うしかないよなｗ｣

｢ですよね…｣

城島部長の采配は完璧だ

管轄部長よりその人の《人となり》を見極める、その城島部長が決めたんなら千賀の将来は決まったも同然だった


｢玉森、二階堂、千賀…、オマエがココで育てた後輩達がコレからどんどん活躍の場を広げて行く、オレ達もうかうかしてらんねぇな！｣

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