LOVE CASTE … 恋哀階級 vol.２

CASTE … ８８ ページ42

｢ヒロ、…終わったよ｣

エピローグがナレーションで流れ、周囲が明るくなった…人のざわめきが《リアル》を伝えてくる

｢…そか、…うん…｣
｢起きれる？｣

先に立ち上がった太輔が、オレに手を差し出してくる、見上げると優しい顔してオレを見つめていた、

《迷ったら、オレの手を取ればいい》

昨日のコトが思い出される…

｢…サンキュ｣
そう言って、オレはその手を取った、そのまま引っ張り上げられる様にして立ち上がる

｢どうだった？｣
｢めっちゃ癒されたな…途中なんかいい香りもしたけど、あれ何？｣
｢ああ、アロマかな…空気に含ませてるらしいよ、森の香りなんだって、スゴイよね｣
｢へえ、香りの効果って凄いんだな、ほんとに森の中で星見てる気分になった｣
｢…そだね…｣

太輔の表情に、一瞬だけ寂しさが見えた気がした

｢太輔…？｣
｢あ、…ん？何？｣
｢いや、なんかお前…変な顔してるから…｣
｢えーひどっ！生まれつきこの顔なんですけどぉ｣
｢ブッ、なんだそれ？｣

太輔らしい返しに、思わず吹き出してしまう
｢ヒーロ、ソコ笑うトコじゃないから！｣
｢ハハ、悪ぃ｣
｢もお！｣

ジャレ合うようにしながら、二人で並んで外に出た

｢これからどうしようか？お腹すかない？｣
｢めっちゃ減った、腹ペコ！｣
｢じゃあさ…｣


その時…

｢トモくん、早くコッチ！｣
｢桜来、急ぐと危ないって…｣

耳に入ったその会話に、オレは思わず声の方向に顔を向けた

途端…周りの景色は一気に遠ざかり、オレの視界と耳にはその人しか映らなくなった


そこにいるのは…

｢トモ…っ｣


呟いただけのつもりだったのに、オレの声が届いたのか、《その人》がこっちに顔を向けた

一瞬だけ…ホントに一瞬だけ限界まで見開かれた瞳がオレを射抜いた、そしてトモはまた…いつもの感情をどこかに置き忘れた様な表情を、オレに見せてきた…

オレとトモの絡む視線を断ち切ったのは、隣にいた太輔の｢ヒロ…｣と言う声と、肩を引き寄せる腕の力…そして、フワリとした淡い空色のワンピースを纏った桜来さんが、隣にいるトモの腕に自分の腕を絡ませる仕草だった

桜来さんの片手は、自身のお腹を庇うように添えられていて、オレが最後に会った時よりも柔らかみを増したような雰囲気を漂わせていた


｢ヒロ、…エレベーター来るよ｣
｢えっ？、…あ…うん…｣

二人から目を逸らしても、その残像は消えない…


胸苦しさをやり過ごそうと大きく息を吐いた時、太輔と目が合った

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