LOVE CASTE … 恋哀階級

CASTE … ４８ ページ50

病院の地下駐に車を停め、エレベーターで総合受付に上がった

道路が空いていた為、予定より大分早く着いてしまって、オレは外来の待合に座り診察を待ってる人達に見るとも無く目を向けた


相変わらずの混み具合だな…


相澤院長はこの病院を開院する時、かつての教え子の中から選りすぐりのドクターを引き抜いていた

医師としての腕は勿論、その志も吟味して院長が声を掛けた医師達は、敬愛する相澤教授に賛同して付いてきた人達だ、入院患者についてはセレブ御用達のイメージが強い相澤だけど、外来は一般の人を多く受け入れていた

｢ウチは街一番の《かかりつけ医》を目指してるんだよ｣

奢るでもなく、患者の思いに沿った真摯な医療を提供する相澤総合病院は、瞬く間に地域トップクラスの大病院として存在するようになった

その相澤院長が後継者にと目を止めたのがトモだ…自分の一人娘と結婚させ、トモを名実ともに次期院長の立場に置いた…

今のトモは入院患者を担当してる…
外来に出てくることはなくなり、経営者として動いていることが多くなった

｢いつでも患者さんと向き合える医者でいたいと思ってる、オレは生涯、医療現場にいたいな…｣

研修医になった頃、トモはよくそう言っていた
そしていつか、自分の病院が持てたら…と夢をオレに話してくれた

状況はどうあれ、トモの夢は叶ったと言うことだった…

待合ロビーの大窓から外を眺めた…

建物から少し離れた中庭に、数人の子供達と青いドクター着の男性が楽しそうにボールを追っていた

｢珍しい、笑ってる…｣

その光景に、つい笑みが零れる…

秋空の下…取り囲む子ども達と同じような笑顔で、トモは外遊びを楽しんでいた

首から下げた聴診器には、《夢の国》キャラクターの双子のリスの小ぶりなぬいぐるみが付いてる

大学病院勤務の頃、トモは小児科を専門にしてた

子供たちは初対面の医者をひどく怖がる
少しでも早くその恐怖心を取り除き、診察をして痛みや苦痛から解放してやりたいと、トモはずっと聴診器に可愛いぬいぐるみを付けていた

｢なんでリス？｣
｢そだな、宏光に似てるから？｣
｢はあ？オレ？｣
｢ずっと一緒にいるみたいだからさ、子どものウケもいいしな｣

そう言って笑ってた…

あの頃と今のトモは、まるで別人だ…

桜来さんとの婚約が決まってすぐ、トモは相澤総合病院に勤務するようになった


誰に対しても優しい表情を崩さなかったトモは、日が経つにつれて笑顔を見せなくなった

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