LOVE CASTE … 恋哀階級

CASTE … １２ ページ13

そのままウチに戻って、スーツを着替えてるとケータイが鳴った

画面に出た名前に、一瞬カラダが強ばる

｢…はい…｣
｢宏光？、オレ、トモ…｣
｢うん、どしたこんな時間に…ＴＥＬなんかしてきて、奥さん…いいのか？｣

｢なんで？大学時代の友達にＴＥＬするのに、いちいちヨメの許可要らねぇだろ｣

友達…だよな、…歪な友達…

｢なんか用？｣
｢月、キレイだからさ、お前も見てるかと思って…｣

思わず窓から外に目を移す

窓枠に絵画のように納まる…乳白色の月…
今、トモも同じ月を見てるんだ…


｢見てねぇよ…｣
｢なんで？、この時間なら丁度寝室の窓枠に絵みたいに収まってるだろ、ベッドで抱き合ってる時…月明かり部屋に入ってくる…お前すげぇキレイだった、オレの上乗っかって…切ない顔して鳴いてて…｣

｢…ッ、止めろって…っ！｣

リアルにその情景を思い浮かべて、カラダが熱くなる…ＴＥＬの向こうのトモが、喉の奥で低く笑った

｢ｸｽ…、なんか想像した？お前はオレのだ…大学の時とオレの気持ちは何も変わらない…宏光、月…キレイだろ…オレにもそう言えよ…｣

｢トモ…｣
｢言えよ…｣


その言葉に含まれる意味を知ってる…

《愛してる…愛してる……》

肌を合わせ耳元で繰り返されるその言葉が、呪文の様にオレをその場に押しとどめる


｢言って…聞きたい…お前が今見てる月、教えて…｣


｢…ッ、月……キレイ…だ…｣

トモの吐息が、耳に熱を持ってかかる

｢なら良かった…おやすみ…｣

その声の向こうから不意に聞こえる、柔らかい優しい声…


《トモくん？電話？…お友達とお話してるの？》
《桜来…、そうだよ…先に寝てていいよ》
《でも、…じゃ待ってるね》

心臓が止まるほどの、恐怖に似た感情を覚えた


桜来さん…
トモの奥さんだ…

あの日、誰からも祝福されてトモの隣にいられる真っ白なドレスを来た人…

自分の想いに決着をつける為に、オレはトモの結婚式に出た…二人を目の当たりにしたら諦めがつくと思った…だけど違った

隣の美しい花嫁を見つめていても、トモの表情には張り付けたような笑顔だけで、そこには何一つ幸せそうな色は無かった

トモは、この人を愛してないんだ…

それがわかった瞬間、自分の胸に湧き上がる高揚感…そして目が合った時の自分を求める飢えた獣の様な瞳が、堪らなく胸を震わせた

ハネムーンの帰り、一人で土産を持ってきたトモと、オレは激しく抱き合った




《LOVE CASTE》の、始まりだった

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