LOVE CASTE … 恋哀階級

CASTE … ２６ ページ28

｢でも…｣

タマは今までのダレた表情から一気に真顔になると、オレの顔を真っ直ぐに見てきた

｢なんだよ…｣
｢あの人は、やめた方がいい…ミツには似合わない｣

その眼差しと声のトーンが、タマが本気でそう思ってることを訴えてくる

｢何言って…｣
｢あの人奥さんいるんだよ！｣
｢…タマちゃん、おま考えすぎだって、妄想しすぎだよ！｣

話題を逸らそうと、オレはオフィスのサーバーからコーヒーを紙コップに入れ一つをタマに渡した

そして、焦る心と顔に必死で仮面を貼り付ける…

絶対に知られるわけにいかない…
この契約が終われば、トモとはもう終わりにする…そう決めたんだ…

｢ホントに？｣
｢ホントホント、昨日はオレが酔っちゃってあの人に迷惑掛けただけだから、あーでも契約に支障が出ない程度にしてっからさ、安心しろよ、な？｣

オレより大分背の高いタマのアタマを頑張ってポンポンすると、やっとタマの顔に笑みが浮かんだ

｢ならいいけど…オレさ、ミツのこと尊敬してるし好きだから、傷ついて欲しくないんだ｣
｢さんきゅ、でも迂闊に好きとかいうとトシくんが泣いちまうぞぉ｣
｢あ？アイツ？へーきへーき、オレが何したってアイツオレのコト好きだから！｣

なにその上からのデレ？

でも…羨ましいと思う
誰にも遠慮せず、好きな人に好きなだけ好きと言える毎日…

それ以上望むコトがあるだろうか…

｢さて、お前の契約は相澤だけじゃねぇだろ！ほら、コーヒー飲んだらさっさと仕事しなさいっ！｣
｢はーい！、ミツお昼さぁニカ千と一緒に食おうね！｣
｢おお、…てかそれってタカリ？｣
｢あはは、まあそんなトコｗｗｗ｣

いつもの笑顔を見せ、玉はデスクに戻って行った

｢オレも戻ろっかな、会議１０時だったよな…｣

腕時計を見た時、ふと鼻先を淡い香りが掠めた
少しだけ甘めのスッキリとした香り…

トモ…

香りまでが、オレを支配するのか…

香りだけじゃない…

シャツの下には無数のトモのオレへの所有権を主張したシルシがついている

耳には、甘い吐息と《アイシテル》の声が今もこびりついて離れない…

心には…トモとの時間と記憶が残ってる…


オレは、忘れられるのか…？
トモから離れていけるのか？


…っ、ダメだ、今は仕事に集中しろ！

トモの残像を振り払い、生ぬるくなったコーヒーを一口で飲み干し、オレはデスクに戻った


そして、そんなオレをタマが不安そうに見つめているのを、この時のオレは気付くことすらなかった…

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