LOVE CASTE … 恋哀階級

CASTE … ２１ ページ22

｢私ですか？私は断然肉派です！｣
｢ｸｽ、…まだお若いですからそうでしょうね、ですが医者として言わせてもらえば、不飽和脂肪酸を含む魚を積極的に食べてほしいものですね｣

｢…はあ、ふほうわ…なんちゃら？、えと、そうなんですか？｣
｢ｸｽｸｽ…そうですよ、…不飽和脂肪酸です｣

疑問を質問で返すことで、タマの意識を反らせていくトモ…切り返しの上手さと玉の天然気質を今だけは素直に有難いと思った

言葉を選びながらの食事会は、デザートの抹茶の葛餅が出たことでお開きとなる、甘さを控えた深みのある味に、何となく笑みが零れた

｢…お車が到着致しました｣

女将の声が閉じられた障子の向こうから聞こえてきた

｢私が頼みました、お送りしますよ｣の声で、一先ず玄関に出ていく、車寄せには2台のタクシーが止まっていた

｢玉森さん、北山さん、お住まいはどちらです？｣

最寄り駅を聞き出すと、トモは

｢では、玉森さん一台お使い下さい、北山さんは私と方向が同じですね、駅まで御一緒にどうぞ｣
｢いえ、私は玉森と…｣
｢私達同じ大学でしょう、タクシーの中で想い出話でもしませんか？｣

開いたドアから車内に掌を向け、乗れと促してくる

屈託の無いその笑顔は、なんの他意も無いコトを伝えてくる様に見えた…オレ以外の人間には…

｢そうしなよミツ、ほらほら｣
｢タマ、ちょっ…｣
少し酔ってるのか、タマの口調が変わってきてる

｢どうぞ｣
軽く腕を捕まれ奥の席に強引に座らされた、そしてトモが隣に座ってくる

｢今日はお忙しい中、ホントにありがとうございました！｣
若手の営業マンらしいタマの元気のいい声がして、ソレを合図のようにタクシーのドアがパタン…と閉まった

ドアの外で深々と頭を下げるタマを、トモが薄い笑いを浮かべて見ながら、軽く頭を下げた


｢どちらに？｣
てっきりそのまま駅までの同乗かと思っていたオレは、ドライバーの質問に返したトモ言葉に愕然となった

トモが告げたのは、都内の一流ホテル…

｢…何でそんなトコ…｣

思わず呟いた言葉に、トモはネクタイを緩めながら、チラリとオレの方を見た

クイッと口角があがり、さっきまでのキレイな笑顔が酷薄な表情に変わる


｢ｸｽ…お仕置き…かな…｣
｢は…？｣


シートの上の手にトモの手が重なり、ギュッと痛いほど握られる



逃げられるはずなんか、無い…






コレが、オレの望んだ







《LOVE CASTE》なんだから…

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