LOVE CASTE … 恋哀階級

CASTE … １４ ページ15

｢おかえり、タマ｣
｢…ん、ただいま｣

相澤総合病院から帰ってきたタマとエレベーターで一緒になった

｢どうだった？｣
｢…前途多難…｣
｢マジか？｣

次の日もタマは資料作りに出勤していた
事前にオレの部署に回ってきた史料は、誰が見ても納得するだけの内容を網羅していた

あの資料でも納得しないのか…
トモの頑なな反応に、オレは少し驚いた

相澤総合病院にとって、不利益なことは何も無いはずだ…どうして…？

｢タマ…｣
｢なんかもう…どうすりゃいいのかわかんねぇよ…あ、降りなきゃ…｣

最寄り階で降りていくタマの背中は、疲れきっていた

この契約が取れなければ…というよりライバル会社に抜け駆けされたら、タマの立場はかなり悪くなる…実力の世界だからソレは受け入れなければならないのかもしれないけど、オレにはどうも腑に落ちない点もあった

そして、その日の夕方…

直属上司の滝沢部長がオレを会議室に呼んだ


｢何でしょうか？｣
｢北山、急なんだけどな明日からお前、営業部に行ってくれ｣
｢は？どういう事ですか？、私がなにか不手際でも起こしたんでしょうか？｣

統轄管理部を出されるということは、そういう事だ…何をしたか考えを巡らせてもなにも思い当たるコトがない…

｢いや、それは違う、実はな…営業部の木村常務からお前を営業部に貸してほしいと依頼があったんだ、今交渉してる相澤総合病院の件、難航しているのを知ってるか？｣

｢あ、はい…玉森が担当してる案件ですよね｣
｢そうだ、かなり条件面で拗れてる…山下医師…事実上のキーマンだが、かなりお怒りなんだ｣
｢お怒り…？｣

｢持って行った資料にミスがあった…｣
｢ミス…ですか？｣
｢今回推してる新薬のデータが、どうやら改ざんされてたらしい、勘違いするな、玉森がしたんじゃない…開発部がな、どうしてもこの新薬の治験を相澤を通して大学病院にさせたいらしくて、…少し上方修正したんだ、山下医師はそれを見破ったらしい…それは流石としか言えないんだが、治験は患者に行うものだ、製薬会社の人体実験の場じゃない！ってな、相当怒ってるらしい…｣

｢それはそうでしょうね…｣

トモならそう言うだろう…仕事に関してはアイツはトコトンまでプロだ…人の命を預かる、自分の判断の狂いで一人の患者の人生そのものを左右する怖さを知ってる…ムリもない…

｢だがこの新薬の開発は、ウチの会社の今後を大きく左右する、どうしてもこの契約は取らなきゃならない｣

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